借地権の基礎知識

借地権の相続で名義変更料は必要なし!不要な理由を解説!

「親が借地に建物を建てていて、亡くなってしまった」というケースもあるでしょう。このような「借地上の建物」についても相続が発生します。このとき、多くの人が迷うのは下のような点です。

  • 相続する場合、借地権の名義変更は必要なのか
  • その場合、地主に「名義変更料」を払う必要はあるのか

この2点について、それぞれ結論を書くと下記の通りです。

  • 名義変更は不要
  • 名義変更料も不要

つまり「どちらも不要」ということです。これを聞いて「相続したのに、なんで名義変更をしなくていいのか」と思うかもしれません。

この記事では「借地権の相続で、名義変更の作業や名義変更料がいらない理由」を解説します。借地権の相続で悩んでいる方には、きっと参考にしていただけるでしょう。

借地権の相続で、名義変更料がいらない理由

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借地権を相続するとき、地主に名義変更料を払う必要はありません。この理由をまとめると、下の通りです。

  1. 借地権の相続は「借地権の譲渡」ではない
  2. 「借地権の譲渡」でなければ、契約書の書き換えは不要
  3. このため、名義変更料は不要

上の説明について、下のような疑問を感じる人もいるでしょう。

ここからは、上記の4つのよくある疑問について説明していきます。

「借地権の譲渡」とは何か

これは「借地権を誰かに売る」ことです。「誰かにあげる」場合は「贈与」になります。

辞書の定義では、「譲渡」という言葉には「無料であげる」という意味も含まれています。たとえば『デジタル大辞泉』は、譲渡の意味を下のように書いています。

権利・財産、法律上の地位などを、他人にゆずりわたすこと。有償・無償は問わない

本来の日本語では、このように「譲渡=無料であげること」も含まれるのです。しかし、不動産用語では含まれません。そのため、借地権の譲渡とは「借地権の売却」である、と理解してください。

  • 譲渡=売却(有償)
  • 贈与=あげる(無償)

贈与との違いは上記の通りです。

なぜ「譲渡」では契約書の書き換えが必要なのか

これは、簡単に書くと「人の物=地主の土地」を売るためです。もちろん、借地権を売っても「土地を直接売る」わけではありません。

借り手がどれだけ借地権を売ろうと、土地はずっと地主のものです。しかし、借地権は「土地を使える権利」であり、これを他人が持っている限り、地主も土地を使うことはできません。

つまり、地主の感覚としては「借地権を売られる」というのは「自分の土地を売られる」ようなものなのです。土地の所有権は自分にあっても、「土地を使う権利を勝手に売られている」というのは、「土地の一部を売られている」ようなものでしょう。

もちろん、この感じ方には個人差があります。しかし、一般的に上のように考える人が多いため、法律では「借地権を売りたければ(譲渡したければ)地主の許可が必要」とされているのです(これは次の段落で説明します)。

このように「人の土地の一部を勝手に売る」ことは許されないため、「まず許可をとる」「その許可について、新たに契約書を作る」ことが必要となります。この「新たな契約書を作る」というのが、「契約書の書き換え」なのです。

このような理由から、借地権の譲渡では契約書の書き換えが必要になります。

「譲渡で許可が必要」ということは、どこに書かれているか?

「借地権を譲渡するときには、地主の承諾が必要」という内容は、法律のどの条文に書かれているのか―。これは民法の612条です。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
民法第612条(Wikibooks)

「譲り渡し」という部分が、譲渡のことを指しています。なお、これは譲渡(売却)だけでなく、無償で譲る「贈与」のことも含まれています。


不動産では「譲渡=売却」で固定されていますが、他の分野では必ずしも「譲渡=売却」ではないのです。これは先に『デジタル大辞泉』の定義で説明した通りです。

民法は不動産だけで使われる法律ではないので、上のように「どちらの意味にもとれる表現」である「譲り渡す」といいう言葉が使われています。


何はともあれ、民法でこのように決められているため、借地権を譲渡するときには「地主の承諾が必要」となるのです。

「譲渡でなければ契約書の書き換えは不要」ということは、どこに書かれている?

これは「借地借家法10条1項」です。「借地権の対抗力等」という内容で、下の文が書かれています。

借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
借地借家法第10条(Wikibooks)

これは、簡単にいうと「建物の登記がされていれば、借地権の登記がされていなくてもいい」ということです。実は、借地権は「登記しなくてもいい権利」なのです。

  • もともと登記しなくていい
  • つまり、相続時に子供が登記しなくてもいい
  • 登記しなくていいので、地主の承諾は不要
  • だから、契約書の書き換えも不要

この説明で「登記と契約書は違うのではないか?」と思うかもしれません。この点を説明します。

契約書は登記より下である

簡単にいうと、契約書は登記よりも「ランクが下」です。

  • 契約書…民間人が勝手に作るもの
  • 登記……法務局が管理するもの

上のように、登記の方が公的なものなので、優先順位が高くなります。そのため、地主が「山田さんの子供は契約書の書き換えをしていないから、借地権を取り上げる!」と言っても無効なのです。

無効というのは、先に書いた「借地借家法第10条」の「第三者に対抗することができる」という一文でわかります。「第三者に対抗」というのは「自分の権利を侵害されない」という意味です。地主が「借地権を取り上げる!」といっても、その主張に借地権を侵害されたりしない、ということです。

借地権の相続で、名義変更料が必要なケース

札束の上の家の模型

借地権の相続で名義変更料が必要になるケースもあります。要点をまとめると、下の通りです。

  • たとえば、その建物(借地権付き)を担保に融資を受けるケース
  • この場合、金融機関が「契約書の書き換え」を要求することが多い
  • そのため、地主に協力してもらい、契約書を書き換える必要がある
  • この協力へのお礼として、名義変更料を払う

つまり、名義変更料というよりは「ただのお礼」といえます。名目が「名義変更料」となることもありますが、あくまで「書換の作業を手伝ってくれたお礼」を地主に払うということです。

ここから先は、上の内容をさらに詳しく解説するため、下のような内容を書いていきます。

以下、それぞれの説明です。

なぜ、融資を受ける時には契約書の書き換えが必要なのか

これは「銀行としては、権利を明確にしておきたい」からです。権利とは「その借地権は誰のものなのか」という権利です。

たとえば、あなたが借地権を相続したとします。そして、あなたの父親が「太郎さん」だったとします。

すると、契約書の書き換えをしていなければ、借地契約書の名義は「太郎さん」のままになっているわけです。この契約書を持って、あなたが銀行に行くシーンを想像してください。


たとえば、あなたが「このように借地権を持っているので、これを担保にお金を貸してください」と、契約書を見せたとします。しかし、銀行は「でも、これは親御さんの名義ですよね?」というでしょう。

そこであなたが「はい。でも、父は亡くなったので借地権は私の名義になっています」と言います。しかし、ここでも銀行は「でも、契約書の名義が変わってないなら、正式にあなたの名義ではないですよね」という反応をするわけです。


こうしたやり取りを経た後、最終的に「正式に契約書の名義を書き換えてから来てください」と言われてしまいます。実際、あなたが銀行の担当者だったとしても、同じことを言うでしょう。

銀行・金融機関の反応が基本的に上のようになるため、融資を受けるには「契約書の書き換えが必要」なのです。

契約書を書き換えるなら、地主の協力が必ず必要

当たり前ですが、契約は一人ではできません。必ず相手がいます。そして、契約の「書き換え」である以上、その相手は一人しかいないわけです。前の契約で(親の)相手をしていた地主です。

つまり、融資のために契約書の書き換えが必要となった時点で、地主の協力が100%必要になります。

協力のお礼を地主に払うが、あくまで実費程度

上のような流れで、地主に協力を依頼し、そのお礼としてのお金を払うことになります。これが「名義変更料」と呼ばれることもあります。

しかし、実際は「ちょっとした作業の手伝いのお礼」であり、法的に決められているような支払いではありません。そのため、それほど高い金額を払う必要はないのです。

地主の労力に合わせて、妥当と思われる程度の金額を渡すようにしましょう。

地主が名義変更料の金額に納得しなければどうするか

上のように書いたものの、その「一般的な金額」で地主が納得するとは限りません。

  • 「こういう不動産の手続きでは、変更料や承諾料は高額になるはずだ」
  • 「借地権価格の10%はもらう」

上のようなことを主張する可能性もあるでしょう(借地権価格の10%というのは、借地権譲渡の承諾料の相場です)。

地主がこのような主張をした場合の対策は、下記の通りです。

  1. まず法的根拠を示して説得する
  2. 弁護士を立てて説得してもらう
  3. 説得できなければ調停に進む
  4. 調停がまとまらなければ裁判

さすがに裁判まで行くことはめったにないでしょうが、調停程度ならあり得ます。大抵は弁護士が出てきた段階で「どうやら法律的に、そんなに名義変更料をもらう権利はないらしい」ということに気づくでしょう。そして、この段階で大体話がまとまるはずです。

万が一まとまらなくても、法的にはこちらが正しいわけです。そのため、上のような流れで最終的には必ず契約書の書き換えができます。

「法的に正しい」とはどういうことか

これは「借地権の相続で地主の承諾が必要」という内容が、法律に書かれていないということです。法律に書かれているなら、その承諾をもらうために、それなりのお金を積むべきです。

上に書いた「借地権の譲渡」は、法律に書かれています(地主の承諾が必要ということが)。そのため、借地権の譲渡をするときの承諾料は高くなるわけです(借地権価格の10%)。

契約書の書き換えなしで、融資を受けることもできる

ここまでは「借地・建物を担保にして融資を受けるときは、契約書の書き換えが必要」と書いてきました。しかし、銀行や担当者によっては「書き換えなしで融資してくれる」こともあります。

理由は「書き換えがなくても、法律的にはその人が借地権を持っているのは確か」だからです。要点をまとめると下のようになります。

  • あくまで「借地権の契約書」の名義が変わっていないだけである
  • 「建物の名義」は変わっている(これは地主の許可なしで変えられる)
  • 借地権がなければ、他人の土地の上に建物を建てることはできない
  • そのため「他人の土地の上に、自分の建物がある」ということが、借地権を持っていることの証明になる
  • だから、契約書の名義が変わっていなくても融資していい

上記の内容は「借地権はどう証明されるのか」という、不動産のルールの基本です(先に解説した「借地借家法10条」の「第三者への対抗要件」です)。

これは当然、銀行の融資担当者も知っています。そのため、ある程度柔軟な銀行や、経験が豊富な担当者なら「建物の名義が変わっていればいい」と判断してくれることもあるのです。

(この点は「みずほ中央法律事務所」が「地主なし・相続人全員の調印のもので足りることもある」という一文で説明しています)

借地権の相続で名義変更をするメリット

契約書に捺印する男性

借地権の相続で名義変更をする義務はありません。しかし、あえて変更するメリットもあります。そのメリットを一覧にすると下記の通りです。

  • 権利が明確になる(トラブルを防げる)
  • 物件を担保にした融資を受けやすい

2つ目の担保については、先に書いた通りです。ここでは1つ目の「権利が明確になる」というメリットについて説明します。

名義変更をすると権利が明確になる

ここまでは「なぜ借地権の契約書を書き換えなくても、相続した借地権が有効になるのか」という説明をしてきました。しかし「ややこしい」と思う人も多いでしょう。

「建物の名義が自分のものなら、借地権もあると判断される」というのは、理由を追っていくと「確かにそうだ」とうなずけるものです。しかし「そもそも、最初から借地権の名義が明記されている方がいい」と、誰でも思うはずです。

すでに亡くなってしまった両親や祖父母の名前がいつまでも契約書類に残っているというのも、何となく違和感があるでしょう。そのため、余裕があれば契約書も書き換えて、借地権の名義変更を正式にする方がいいのです。

地主が要求する変更料次第

実際に変更するかどうかは、地主が変更料をいくら要求してくるかです。ここまで書いてきた通り「法的に払う義務はないお金」であり「ただの労力に対するお礼」として払うものです。

そのため、法外な金額を要求されたら断るべきといえます。書き換えは「その方がスッキリする」というだけのものです。そのためにわざわざ高い金額を払う必要はないでしょう。

名義でトラブルになっても、最終的には解決できる

繰り返し書いている通り「建物の名義があなたのものである限り、借地権の名義もあなたのもの」です。つまり、「契約書の名義が違う」という原因でトラブルになっても、最終的には必ず解決できます。

そのため「トラブル防止」という目的のために、無理に名義変更料を払うなどの必要はありません。

借地権の相続でトラブルを回避する2つのポイント

「トラブルを避けたいので、借地権の相続でも名義変更をしておきたい」という人もいるでしょう。この場合、他のトラブル防止策も知っておくと、さらに安心です。

借地権の相続でトラブルを回避するには、下の2つのポイントを意識しましょう。

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

遺産分割協議書・遺言状などを確実に保管しておく

多くの相続では、遺産分割協議書が作成されます。相続人が複数いる場合は「誰がどの遺産を、どれだけもらっていくのか」を話し合う必要があるためです。この話し合いをまとめた書類が、遺産分割協議書です。

当然ながら、この書類を紛失してしまうとトラブルの原因になります。一度確定した遺産の分割が、ひっくり返されてしまう可能性があるためです。

遺言状も同じです。故人の遺言は「遺留分減殺請求」により、最大で半分は無視されることもあります。しかし、半分は確実に尊重されます。

つまり、遺言状を保管している限り、そこに書かれている内容は「半分は確定」なのです。しかし、これも紛失してしまうと後々トラブルになります。

協議書も遺言状も、そうそうなくすものではないが…

上の説明を読んで「協議書も遺言状も、なくす人間はあまりいないだろう」と思うかもしれません。確かに、遺言状については故人の形見ともいえるもので、なくすことは少ないでしょう。

しかし、遺産分割協議書は意外となくすこともあります。どんな形式で作るかにもよりますが、多くは「A4の用紙に印刷するだけ」だからです。他の書類に混ざって処分されてしまうことは、十分に考えられます。

このため、特に整理整頓や物の管理に自信がない方は、これらの相続関連の書類の保管を、しっかりするようにしてください。

「建物の相続登記」を行う

建物とは、借地に建っている建物のことです。たとえば親がその建物に住んでいて亡くなったら、その所有権を自分に移転するということです。

これは自分でやらなければ、法務局が自動的にやってくれることはありません。法務局は市区町村の役所のように戸籍を管理しているわけではないので、あなたが(親の)死亡届を提出してもその情報が届かないのです。

そのため「この建物の所有者だった、家の親が亡くなりました」「そのため、所有権を私に移転します」という登記が必要になります。当たり前のことのようですが、意外とこの登記をしていない方が多いのです。

なぜ建物の相続登記をしないのか

これは単純に「大変だから」です。司法書士に任せるとそれほど難しくありません。しかし、安くても5万円程度、高ければ数十万円の報酬が必要になります。

この費用が出せない、あるいはもったいないと思って依頼しない人も多いのです。建物の所有権は、住宅ローンを返し終わっていれば登記していなくても大きな問題がありません。死んだ方の名義のままになっていても「誰も気づかない」ことがほとんどなのです。

そのため、借地権付き建物でも「相続登記がされていない」という物件は多くあります。それでも大きな問題はないのですが、後々トラブルが起こる確率を下げたいのであれば、登記はしっかりしておきましょう。

まとめ

以上、借地権の相続で名義変更料は必要ない、という内容を解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。

借地権の相続と名義変更料・まとめ
  • 名義変更料が必要なのは譲渡・贈与のみ
  • 相続では名義変更料は不要
  • 理由は「建物の所有権があれば、借地権もある」ため
  • 建物は親などが死んだ時点で自動的に権利が移転する
  • つまり、その時点で借地権も移転している
  • ただ、建物の所有権の登記だけはしておくべき

上記が特に重要なポイントで、その他下のような点も知っておくといいでしょう。

  • 借地権付き建物を担保に融資を受ける場合、契約書の書き換えが必要になる
  • 不要なこともあるが、多くの銀行では求められる
  • 契約書の書き換えをするときは、地主に名義変更料を払う必要がある
  • ただ、あくまで「作業をしてもらったお礼」なので、それほど高額ではない
  • 「借地権価格の10%」などの高額を要求されたら断るべき
  • その他、融資を受けなくても「権利をしっかり整理する」上でも、契約書の書き換えはメリットがある

相続時は親や親族などが亡くなったということで、精神的にも物理的にも大変なことが多いものです。そのため、すぐに建物の相続登記などはできなくてもかまいません。余裕ができたときに少しずつ進めていただくといいでしょう。

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