借地権の基礎知識

借地権の売買相場は「本来の価格の半額+α」が目安?計算方法を解説!

借地権を売買するとき、気になるのはその相場でしょう。売り手なら「大体いくらで売れるのか」、買い手なら「大体いくらが適正価格なのか」が気になるはずです。

借地権の売買に、明確な相場はありません。しかし、大雑把な目安は「本来の価格の半分+α」です。

この記事は、なぜそのように言われるのか、本来の価格はどのように計算するのか、などの内容を解説していきます。借地権売買の相場を知りたい人には、きっとヒントにしていただけるでしょう。

借地権の売買相場は「本来の半額+α」が目安

相場を話し合う二人

冒頭にも書いた通り、借地権の売買価格について明確な相場はありません。しかし、その中でも大雑把な目安として「本来の価格の半分+α」ということがいわれています。ここでは、その理由を下のような項目で説明していきます。

  1. 神奈川宅建業協会の見解
  2. 「本来の価格」の計算方法
  3. なぜ本来の価格より大幅に安くなるのか

以下、それぞれの項目の説明です。

神奈川宅建業協会の見解

公益財団法人である「神奈川県宅地建物取引業協会」は、借地権の売買相場の目安について、下のような見解を示しています。

借地権はその利用や処分について制約があり、なかなか上記の理論的な価格で売れないのが実務です。状況により異なりますが、せいぜい上記の理論的な価格の半額プラスアルファ程度での売却になるのではないかと思われます。
借地権価額の算定方法(公益社団法人・神奈川県宅地建物取引業協会)

文中の「上記の理論的な価格」というのは「本来の価格」のことです。

「本来の価格」の計算方法

借地権の本来の価格は、一般的に「借地権価格」と呼ばれます。これには下のような計算式があります。

路線価×面積×借地権割合

3つの項目の意味は、それぞれ下の通りです。

路線価 国が決めるもの。1㎡あたりの価格
面積 そのまま
借地権割合 国が決めるもの。地域によって違う。30%~90%の間で決まる

たとえば、下のような物件(借地権)だったとしましょう。

  • 路線価…20万円(1㎡当たり)
  • 面積…100㎡
  • 借地権割合…60%

この場合、先ほどの計算式に数字を当てはめると下のようになります。

  • 計算式……路線価×面積×借地権割合
  • 当てはめ…20万円×100㎡×60%

数字だけにすると「20万×100×0.6=1200万」となります。これが、このケースでの借地権の「本来の価格」です。

そして、借地権を売買するときの相場は「その半分プラスα」になることが多いので、600万円プラスαとなります(このケースでは)。

なぜ本来の価格より大幅に安くなるのか

この理由は「借地権だけでは自由に使えない」ためです。借地権の所有者(土地の借り手)は、下のようなことが地主の許可なしではできません。

  • 借地権の売却
  • 建物の建て替え・増築

この時点で「不自由」という理由から値段が下がります。さらに、これらの許可を得るときに地主に払う「承諾料」も、値段が下がる原因です。

承諾料の相場は?

承諾料の相場は「承諾を受けたい内容」によりますが、たとえば借地権の売却(譲渡)だったら、借地権価格の1割が相場です。これは専門家も下のように説明しています。j

借地権譲渡の承諾料は,標準的なケースでは借地権価格の10%が相場です。
借地権譲渡の承諾料の相場(借地権価格×10%)※みずほ中央法律事務所

借地権を売買するときは、この承諾料を「売り手・買い手のどちらが負担するか」ということも問題になります。もし買い手が負担するのであれば、買い手としては「普通より10%下げた値段でなければ買いたくない」と思うでしょう。

このような2つ目の理由もあって、借地権の売買相場は本来の価格より大幅に安い「半分プラスα」が一応の目安となるわけです。

(この目安はあくまで「強引に目安をつけるなら」というもので、実際の売買相場はケースバイケースだと理解してください)

コーヒーカップ・ソーサー理論

コーヒーカップ

借地権の売買相場が安くなる理由は「コーヒーカップ・ソーサー理論」で説明されることが多くあります。この理論についてポイントをまとめると、以下の通りです。

  1. セットで価値があるものは、切り離すと価値が大幅に下落する
  2. 借地権は「底地権」とセットで価値がある
  3. つまり、一番価値を感じてくれるのは「地主」である

以下、それぞれのポイントについて説明します。

セットで価値があるものは、切り離すと価値が大幅に下落する

コーヒーカップとソーサー(受け皿)は、セットになって初めて意味があります。片方だけだと価値が大きく下落します。

このような「セットで価値があるものは、切り離されると価値が激減する」という理論が、コーヒーカップ・ソーサー理論です。「靴下の片方」でも何でもそうですが、こうした組み合わせは日常でよく見るので、納得しやすい理論でしょう。

借地権は「底地権」とセットで価値がある

借地権について見ると、やはり「底地権」とセットで価値が生じるものです。底地権とは「土地の所有権」で、地主が持っている権利を指します。

もちろん、借地権だけでも建物の所有権は持てますし、その建物で生活することも、店舗や会社を経営することもできます。ただ、底地権がない分、何かと不自由なのは先に説明した通りです。

つまり、一番価値を感じてくれるのは「地主」である

「セットでなければ価値が減る」というのは、借地権だけではありません。反対側の底地権も同じです。

このため、あなたが売却したい借地権に一番価値を感じてくれる可能性があるのは地主といえます。借地権(土地の利用権)さえ取り戻せば、その土地を自由に使えるためです。

また、地主本人が土地を使うのでなくても「底地権を売却したい」というケースで、やはり借地権を他者が持っていると厄介です。底地権は借地権より弱いので「借地権を握られている土地なんて買いたくない」という買い手は多いといえます。

このような理由から、地主の方でも「借地権を買い戻したい」と思っている可能性はあります。借地権を相場より高い価格で売りたければ、まずは地主にうまく売り込むのがいいでしょう。

借地権の売却価格が下がる3つの要因

不動産の下落イメージ

  1. 借地権の更新時期が近い
  2. 地主からのローン承諾許可がない
  3. 地主との関係が悪化している

借地権の更新時期が近い

借地権もアパート・マンションの賃貸と同じで「更新」があります。これは法律で決まっているわけではなく、慣習によるものです。

中には更新のルールがない借地権の契約もありますが、ほとんどの契約では更新のルールがあります。そして、借地権の更新料の相場は、下の2通りが一般的に言われているものです。

  • 更地価格の3%
  • 借地権価格の5%

これは下の専門家の記述でもわかります。

更新料の相場については、東京都内の場合、更地価格の3%と言われることがあります。
(中略)
あるいは、借地権価格の5%と言われることもあります。
借地「更新料の相場と金額」(内藤寿彦法律事務所)

たとえば更地価格が1000万円だったら、更新料は30万円です。2000万円なら60万円、3000万円なら90万円となります。

多くの人がマイホームを建てる土地は、地域にもよりますが1000万円~3000万円程度で納まることが多いでしょう。このため、更新料の大雑把な目安は「30万円~90万円」といえます。

これを高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれです。ただ、この金額分借地権の売却価格が下がることは間違いありません(更新が近い借地の場合)。

「住宅ローンを組む承諾」を地主から取れない

借地権を売りに出す場合、大抵「借地権付き建物」を売るでしょう。買い手にとっては「中古住宅を買う」わけです。

住宅を現金一括で買える人はめったにいません。大抵は住宅ローンを組むことになります。

しかし、借地権では住宅ローンを組むにも「地主からの許可」が必要になります。法的には不要ですが、ほとんどの金融機関は「地主の承諾」を求めるものです。

※参考…建物に抵当権を設定すると借地権にも効力が及びます(内藤寿彦法律事務所)
http://www.naito-lawyer.com/sh_jouto.html#c5-1

このため、地主から「住宅ローンを組む承諾」を取れないと、多くの買い手にとって、その借地権は買うのが困難なものとなります。

住宅ローンを拒否する地主は多い

住宅ローンを組むことを拒否する地主は少なくありません。明確な統計はありませんが、拒否される確率が半分程度はあるといえます。

地主が住宅ローンを拒否する理由は主に下のようなものです。

  • 拒否することで承諾料を払わせようとする(あるいは値上げさせる)
  • 新しい借り主が銀行まで巻き込んで入って来ると、何か面倒だと感じる
  • 自分の土地に抵当権を設定されると勘違いしている

一番多いのは1つ目のパターンでしょう。「ごねて有利な条件を引き出す」というのは、借地権のローン承諾に限らず、どんな場面でも見られるものです。

2つ目も多いもので、「何となく精神的に嫌だ」というものです。生物にとって環境が変化するというのはストレスなので、人間にも現状を維持したがる「現状維持バイアス」という心理があります。

このため、借り手が変わるだけでも多少のストレスになり、さらに銀行まで入って来ると「何となく嫌だ」と感じる地主も多いのです。

3つ目については、借地権の売買で抵当権が設定されるのは「建物」です。住宅ローンを組む「次の借り主」が所有する不動産は建物しかないのだから当然です(土地の所有権は地主のままです)。

※次の借り主が何か別の不動産や車などの資産を持っている場合は、それを抵当に入れることもできます。

このように、借地権の抵当権が土地に設定されることはないので、これを理由に地主が拒否している場合は、説明すれば納得してもらえる可能性があります。

地主との関係が悪化している

借地権を行使してその土地に住む場合、地主との関係が悪化すると極めて不利になります。借地権者は「借地借家法」によって強力に保護されているので、地主から強制的に追い出されるということはありません。

しかし、関係が悪化していれば、下のようなあらゆることができなくなります。

  • 自分の借地権と地主の底地権をセットで売却にかける
  • 自分の借地権を、地主に買い取ってもらう
  • 地主の底地権を、自分に売ってもらう
  • 自分の借地権を、誰かに売却する

いずれも地主の合意や協力がなければできないものですが、こうした選択肢がすべてなくなってしまいます。地主との関係が悪い借地というのは、所有者にとって非常に不利なのです。

このため、細かいヒアリングの段階で「ああ、地主との関係が悪いな」と判断されたら、それで借地権の価格が下がってしまうこともあります。自分の借地権の価値を下げないためにも、地主との関係はできるだけ良好に保ちたいものです。

まとめ

家の模型で話し合う二人

以上、借地権の売買相場についてまとめてきました。最後に要点を整理すると下の通りです。

借地権の売買相場・まとめ
  • 明確な相場はない
  • 大雑把な目安としては「本来の半額+α」
  • 本来の価格とは「借地権価格」のこと
  • 借地権価格は「路線価×面積×借地権割合」で出せる
  • 路線価・借地権割合は、国税庁のサイトでわかる

明確な相場がない借地権の売買ですが、上記のようなポイントを理解していただくことで、適正価格で売買できる可能性がより高くなるでしょう。これから借地権を売りたい・買いたいと思っている方は、ぜひ上記のポイントを意識していただけたらと思います。