借地権の基礎知識

借地で破産するとどうなる?残った建物の解体費用は地主が支払う?

借地の契約では、借り手が破産することもあります。この時に借地権がどうなるのかは、借り手も地主も気になるところでしょう。

簡単に書くと、破産後の借地権は下のようになります。

この記事では上記の3点も踏まえて「借地の破産」について解説していきます。借地人の破産で悩んでいる地主の方や、ご自身に破産のリスクがある借地人の方には、お役に立てる内容になるでしょう。

借地人が破産すると競売になる

頭を抱える男性と家の模型

借地人が破産した後の展開として、一番多いものは「競売」です。競売によって何が起こるかをまとめると、下のようになります。

  1. 借地権と建物は競売にかけられる
  2. 落札されたら、その競落人が借り主になる
  3. 競落人が借り主になることを、地主は一応拒否できる
  4. 競落人が裁判所に訴えたら、地主は拒否できないことが多い
  5. 競落人に問題がある場合は、裁判所も地主の拒否を認める

それぞれ詳しく説明していきます。

借地権と建物は競売にかけられる

借地権と建物は、それぞれ借地人の資産です。この借地人が破産したわけなので、自動車などと同じく競売にかけられます。

落札されたら、その競落人が借り主になる

落札したら、その競売の勝利者(競落人といいます)が、新しい借り主になります。気になるのは、地主がこれを拒否できるかどうかでしょう。

競落人が借り主になることを、地主は一応拒否できる

競落人が気に入らない場合、地主はこの人(法人含む)が借り主になることを、一応拒否できます。一応という理由は下の通りです。

  • 破産した借地人が借地権を競売に出すのは「売却」と同じである
  • 借地権の売却には地主の承諾が必要
  • だから、承諾しなければいい

これで一時的な拒否はできるのですが、大抵は下のような展開になります。

競落人が裁判所に訴えたら、地主は拒否できないことが多い

これは競売でない普通の売却でも同じですが、地主がどれだけ認めなくても、新たな持ち主が裁判所に訴えて裁判所が認めれば、それで借地人の交代が可能となるのです。

もちろん、裁判所の命令で認める場合でも、地主は承諾料をもらえます。このため、地主にとってデメリットばかりではありません。

競落人に問題がある場合は、裁判所も地主の拒否を認める

競落人が反社会勢力であるなど、明らかな問題がある場合は例外です。この場合は裁判所も地主の拒否を認めます。

逆に言えば、このくらい「明確な理由」がなければ、借地権と建物は必ず競落人のものになるということです。

競売で地主が落札する方法

家の模型とカギを持つ人

借地権の競売には、地主も参加できます。地主が参加するときのルールや、ポイントをまとめると下の通りです。

  1. 先買権(介入権)で、100%落札できる
  2. 価格の決定のために、普通の競売はする必要がある
  3. 競売で決まった金額を出せないなら、地主も買い取れない
  4. 地主は「承諾料」の金額分、他の人より安く買える
  5. 借地権の価格自体も、競売では下落していることが多い
  6. 借地権を買い戻したい地主にとってはチャンス

それぞれ詳しく説明します。

先買権(介入権)で、100%落札できる

借地権の競売では、地主が100%落札できます。これは先買権(介入権)という権利があるためです。

(読み方は「さきがいけん・せんばいけん」のどちらでもOKです)

先買権とは

先買権は、文字通り「他の人に優先して買う権利」です。不動産だけで適用される権利ではありません。

借地の競売で、地主に先買権がある理由

これは「もともと地主の持ち物」だからです。あくまで「借りる権利」を与えていただけで、所有権は今も昔も地主のものなのです。

そのため、地主が優先的に落札できるというのは、誰でも納得できるでしょう。

価格の決定のために、普通の競売はする必要がある

「先買権がある」といっても「どんな価格でも自由に買える」ということではありません。価格は通常どおり競売によって決めます。

  1. 競売にかける
  2. トップの価格が決まる
  3. その金額を出せば、地主が確実に買える

もっと簡単に書くと、下の通りです。

  1. Aさんが1億円で、競売に勝った
  2. 地主が1億円出すなら、Aさんに対して「先買権」を使える

つまり、上のケースでは「地主が1億円出せないなら、先買権があろうと買い取れない」ということです。

競売で決まった金額を出せないなら、地主も買い取れない

地主が100%落札できるというのは、あくまで「1位の人が提示した金額を出せるなら」ということです。地主が先買権によって買い取る流れを書くと、下のようになります。

  1. 競売が始まる
  2. 地主は傍観する
  3. 誰かが1位で落札する
  4. その金額で、地主が先買権を行使する

つまり、地主は「後出しジャンケン」をするようなものです。競売が完全に終了してから「では、1位の人の金額で私が買います」といって、先買権を行使するわけです。

勝ち目のない競売に挑む人がいるのか?

上の?明を読んで「そんな勝ち目のない物件で、競売に挑む人がいるのか?」という疑問を持つでしょう。これについて?明すると、下の通りです。

  • 思い切り高い金額で落札すれば、地主も先買権を使えない可能性がある
  • そもそも、プロは最初に地主に直接コンタクトを取る

その借地の地主が誰かは、登記簿を見ればわかります。登記簿には所有者の氏名・住所も書かれているので、コンタクトを取ることは容易です(もちろん、拒否される可能性もありますが)。

せっかく自分が落札しても、地主に先買権を行使されては意味がありません。そのため、本気で落札したい人や業者は事前の「根回し」をするものです。

地主は「承諾料」の金額分、他の人より安く買える

ここまで書いた通り、地主が買い取るにしても「競売で決まった金額」になります。しかし、他の人よりは地主の方が安く買えます。

理由は「承諾料」を払う必要がないためです。承諾料は地主がもらうお金なので、地主が自分に払う必要がないのは当然です。

  • 他の人…落札価格+承諾料
  • 地主……落札価格

上のように、落札価格だけで買い取れる分、地主は有利ということです(そもそも、その土地の所有権を持っているのだから当然ですが)。

借地権の価格自体も、競売では下落していることが多い

競売はわかりやすくいうと「たたき売り」です。このため、借地権や建物の価格も、本来よりかなり安くなることが多いものです。

競売物件は、主に下のような理由で安くなります。

  • チェックしている一般人が少ない
  • 何となくトラブルが起きそうで嫌だ

どちらの理由も実感しやすいでしょう。SUUMOなどの情報サイトで「普通の中古住宅」だったら、多くの人がチェックしているかと思います。

しかし、「官公庁オークション」のサイトまでチェックしている人は少ないでしょう。そもそも「存在自体を知らない」という人も多いかと思います。

2つ目については、たとえば近所の人が「○○さんが借金を払えなくて競売にかけられた物件」ということを知っていたら、何となく住みづらいでしょう。コミュニケーション力が高くて、そのようなイメージの影響を受けない人ならいいですが、イメージに呑み込まれてしまう人も少なくありません。

普通の価格より安く買えるのは魅力ですが、上記のような理由から「競売物件をマイホームとしては買わない」という人が多いのです。このため、競売では借地権と建物の価格も「相場より安く」なっています。

借地権を買い戻したい地主にとってはチャンス

ここまでの内容をまとめると、借地人が破産して物件が競売にかけられることは、「借地権を買い戻したいと思っていた地主にとってはチャンス」といえます。理由は下の通りです。

  • 借地権は、本来なかなか買い戻せない
  • それを期限満了より早く買い戻せる
  • しかも、本来の価格より安い

例えば、借地権の種類が旧借地権・普通借地権の場合、借り主が更新したいという限り、契約は永遠に更新できます。建物が「朽廃して人間の住めない状態」になるまで、延々と借り続けることができるのです。

定期借地権だったら「期間満了のタイミング」で買い戻せます。しかし、これも「最短で50年」という期限ですし、仮に30年経過していても、あと20年待たなければいけません。

このように、地主が借地権を買い戻すのは本来非常に難しいのです。そのチャンスが来ただけでなく「本来の価格より安い」わけですから、地主にとっては絶好の機会といえるでしょう。

競売自体を防ぐ方法

家の模型を守る男性の手

「先買権を使うより、そもそも競売自体を阻止したい」と思う地主も多いでしょう。この方法と注意点をまとめると、下記の通りです。

  1. 競売が始まる前に「借地権の解除」をすればいい
  2. 解除の理由は「地代の不払い」でOK
  3. 問題は「建物の取り壊し」を地主がすること
  4. 破産した借地人は、取り壊し費用を出せない
  5. 最初に借地人の信用度を見極める必要がある

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

競売が始まる前に「借地権の解除」をすればいい

競売を阻止する方法は簡単で、始まる前に「借地権契約の解除」をするだけです。競売にかけられるのは「借地権」ですから、「借地権の契約自体をなしにする」ことで、競売を防げます。

解除の理由は「地代の不払い」でOK

借地権を解除するには正当な理由が必要ですが、これは「地代の不払い」でOKです。借地人が破産したということは、かなりの確率で長期間の滞納をしているでしょう。

そのため、これを理由にして借地権を解除すればいいのです。

問題は「建物の取り壊し」を地主がすること

この方法をとると「建物の取り壊しを地主がしなければいけない」という問題が生じます。この理由は下の通りです。

  • 借地権を解除しても、建物は残る
  • 建物は破産した借地人のものである
  • 一応、これだけで競売にかけることもできる
  • しかし、誰も買うはずがない

買うはずがないという理由は「借地権なしで建物だけ」というのは、権利として非常に不安定だからです。土地の所有権どころか借地権もない以上、地主から出て行けと言われたら出ていく必要があります。

つまり「買い取っても使えない」「何のメリットもない」ということです。

このため、借地権を解除しても建物は残ってしまいます。この建物が不要なら、取り壊しは地主がしなければいけないのです。

破産した借地人は、取り壊し費用を出せない

本来、地代の滞納で契約が解除されたなら、取り壊しは借地人の義務です。しかし、借地人が破産している以上、この費用はおそらく出せないでしょう。

このため、上記のように「地主が取り壊す必要がある」のです。この点は、専門家も下のように書いています。

(前略)
借地権の付いていない建物だけを競落する者が現れない可能性が高いことから、土地上に建物が残置される可能性が高く、
(中略)
土地上に建物(ビル)が残置された場合には、借地人(会社)が倒産している以上、最終的には、地主がみずからの費用で建物を撤去せざるを得なくなる
(後略)
借地人の倒産による借地上の建物の競売と借地権等の行方(公益社団法人・不動産流通推進センター)

地主からしたら、地代を滞納された上に解体費用まで出すことになる、というのは踏んだり蹴ったりでしょう。しかし、現実にそうするしかないのです。

最初に借地人の信用度を見極める必要がある

上記のようなトラブルが起こりうるため、土地を借地に出すときは「借地人の信用度をしっかり見極める」必要があります。これは賃貸住宅を経営するときも同じです。

大家は何も悪くないのに、入居者が部屋をゴミ屋敷にする、孤独死してしまうなどの原因で、大きな損害を受けることがあります。ゴミの撤去費用や、遺体の処理費用、特殊清掃の費用などを大家が出さなければいけないのです(他に出す人がいないため)。

賃貸住宅でも土地でも、不動産を人に貸すことはリスクのあることです。これをよく理解した上で、契約時点で借地人の信用度をしっかり見極めるようにしましょう。

借地人が破産しても、契約が継続するケース

握手する2人の男性

実は、借地人が破産しても借地契約が継続するケースもあります。どのようなケースか説明すると、下記の通りです。

  1. 借地人が地代を払っていればOK
  2. なぜ破産しても「借地権」という財産を持てるのか
  3. 借地人が借地権を売却して、返済の足しにできるようにする
  4. 現実には「不払いによる解除」が多い

以下、それぞれの説明です。

借地人が地代を払っていればOK

実は、破産しても借地人が地代を払っているなら、借地の契約は解除されないのです。これは、専門家も下のように書いています。

借地人が破産をしても、地代の支払いが継続し、使用者、使用方法に変更がない限り、地主に経済的な悪影響を与えないので、契約解除権を地主に認める必要はないと言える。
借地人が破産すると借地契約を解除され、退去しなければならないのか(東京・台東借地借家人組合)

解除されない理由は、上の引用文の通り「地主にダメージはない」ためです。確かに、借地人が破産したことを聞くと、地主としては「大丈夫か?」と不安になるでしょう。

しかし、現実に地代がしっかり払われているなら、物理的な被害は何も受けていないわけです。そのため「借地人が地代を払っていればOK」となります。

なぜ破産しても「借地権」という財産を持てるのか

通常、自己破産をすると全ての財産を手放す必要があります。生活の基盤である住宅でさえも、放棄しなければいけません。手元に残していいのは20万円の現金だけです。

これは借地権という財産も同じです。最終的には競売か任意売却という方法で、売却することになります。破産した後「ずっと借地権を持っていられる」わけではありません。

借地人が借地権を売却して、返済の足しにできるようにする

地主による借地権の解除がなければ、借地人はその借地権を売却できます。そして返済の足しにできるのです。

返済の足しは、専門的にいうと「返済資金への充当」となります。そもそも、自己破産で財産を手放さなければいけないのは、すべて「返済資金に当てるため」です。

つまり、借地権が解除されないといっても、借地人からすれば結局「自動車などと同じく、放棄することになる」といえます。

現実には「不払いによる解除」が多い

ここまで書いたように「もし地代の滞納がなければ」、地主が借地権を解除することはできません。しかし、現実には借地人が破産するケースでは、ほとんど「地代の不払い」が起きています。

そもそも、地代を払える借地人だったら破産する確率は低いでしょう。このため、現実には「借地人が破産すると、ほとんどは地主が契約解除をできる状態」になっています。

このため「借地人の破産=契約解除」と思っている人も多いものです。実際にはそうなっていますが、正式なルールはここまで書いたように異なっている(地代を払っていれば解除されない)と理解して下さい。

まとめ

破産と法廷のイメージ

以上、借地権の契約で借地人が破産した場合のルールなどをまとめてきました。最後に要点を整理すると、下のようになります。

借地権の破産・まとめ
  • 大抵は競売になり、借地人が交代する
  • 地主は拒否できるが、裁判所が仲介すれば拒否できない
  • 競売には地主も参加できる
  • 地主には先買権があるので有利
  • 競売を防ぐには「契約解除」をすればいい
  • しかし、その場合は地主が建物を取り壊すことになる
  • 借地人が地代を払っていれば、破産しても契約は継続する

競売によって借地人が交代することなどは、地主にとってそれほどデメリットではありません。問題は「誰も買い手がいなかった場合に、地主がその建物を壊さなければいけない」ということです。

これは本当に痛いことですが、現実に「誰かがやらなければいけない」「該当するのは地主しかいない」となったら、やるしかありません。

このように、余っている土地を借地として人に貸すことには、それなりのリスクもあります。リスクも含めたデメリットとメリットをよく見極めた上で、借地契約を結ぶようにして下さい。