借地権の基礎知識

借地権の法人税がかかるのは譲渡(売却)で利益が出たとき~計算方法・会計処理を解説~

法人として土地を借りていれば、借地権と法人税の関わりも理解する必要があります。借地権の法人税について、特に理解するべきポイントは下のようなものです。

これらのポイントを理解することで、借地権の法人税の会計の概要を掴んでいただけるでしょう。

借地権の法人税とは

TAXの文字と人形

借地権の法人税は、一言でいうと「売却したときにかかる税金」です。より詳しく説明すると、下のようになります。

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

法人税がかかるのは、売却で利益が出たときのみ

借地権で法人税がかかるのは、譲渡(売却)をして、利益がでたときだけです。それ以外では、一部の例外を除けば法人税がかかることはありません。

これは当然で、法人でも個人でも借地権を持っている場合は「土地を借りている」わけです。つまり、地代の支払い義務があり「借地権は連続してコストを生み出すもの」といえます。

つまり、借地権を持っているだけなら法人税はかからないのです。あくまで「売却して利益が出たら」税金がかかります。

(なお、借地権の売却と税金については下の記事で詳しく解説しています)

固定資産税は「建物のみ」かかる

法人税とは違いますが、会社が支払う税金の一つとして「固定資産税」もあります。借地権の固定資産税は「建物分」のみかかります。

土地の固定資産税は地主が払うので、支払義務はありません。借地ということは「土地の価値の何割かを借り手が持っている」わけですが、その分についても固定資産税を支払う必要はないのです。

地代には固定資産税の分も含まれている

理由は単純で、地主が徴収する地代には「固定資産税やその他のコストも含まれている」ためです。つまり、ある意味「間接的に借り主も固定資産税を払っている」といえます。

ただ、直接役所から請求される・納税するということはありません。

(借地権の固定資産税については、下の記事で詳しくまとめています)

借地権を譲渡したときの法人税

木型の家と電卓と帳簿

借地権を譲渡、つまり売却すると利益が出ることがあります。もし利益が出たら、通常の事業の利益と同じように法人税がかかります。

この税金の計算方法についてポイントをまとめると、下のようになります。

以下、それぞれのポイントについて説明します。

利益(譲渡益)の計算式

まず、借地権の譲渡益の計算式は下の通りです。

譲渡対価-(借地権設定時の支払権利金+借地権譲受時の取得価額+譲渡承諾料)

難しい式ですが、基本は「売上-コスト」です。先頭の譲渡対価が売上で、カッコ内の3つがすべてコストです。

式の各項の言葉の意味

上の式の各項の言葉の意味は、下の通りです。

譲渡対価 売った金額
借地権設定時の支払権利金 権利金(借地権の購入費用のようなもの)
借地権譲受時の取得価額 借地権の購入にかかった諸費用(整地費用・仲介手数料など)
譲渡承諾料 承諾料(地主に払う)

右側の「簡単な表現」で再度計算式を書くと、下の通りです。

売った金額-(権利金+諸費用+承諾料)

このように書くと、大分わかりやすいでしょう。この式で「譲渡益=利益」は出ます。次はその利益にどんな税率をかけるのかです。

税額は普通に「利益×法人税率」で出す

税額の出し方は「普通」です。通常の事業の利益と同じように「利益×法人税率」で出せます。

法人税率の一覧

法人税の税率は、その企業の規模や利益の金額によって変わります。まず、以下のような法人のグループから説明します。

  • 中小法人
  • 一般社団法人等
  • 公益法人等とみなされているもの
  • 人格のない社団等

「等」や「等とみなされているもの」は取りたいところですが、取ると情報が不正確になってしまいます。たとえば「公益法人等とみなされているもの」は「公益法人」とは別物なのです。

公益法人には別の税率が用意されています。そのため、冗長ですが「等とみなされているもの」という表記も必要なのです。

そして、これらのグループの税率がどうなるかというと、「年800万円」を境に下のようになります。

年800万円以下の部分 19%(15%)
年800万円超の部分 23.2%

つまり、19%か23.2%のどちらかということです。

カッコ内の「15%」とは?

これは2019年3月31日までに開始する事業年度の税率です。法人は「毎年何月から事業年度を始める」というものがあります。

たとえば学校なら「毎年4月」から年度が始まっていますが、それと同じです。たとえば2019年の事業年度を「4月1日」から始める場合、上の「3月31日」を過ぎてしまいます。

そのため、税率はカッコ内の15%ではなく、カッコの外の「19%」になります。逆に3月中に2019年の事業年度を始めれば、その1年の税率は「15%」になるということです。

その他の法人の法人税率・一覧

上で説明した4種類の法人以外には、下のような法人があります。

  • 中小法人以外の普通法人(主に大企業のこと)
  • 公益法人等
  • 協同組合など
  • 特定の医療法人

そして、それぞれの税率は下のようになっています。

中小法人以外の普通法人 23.2%
公益法人等(年800万円以下の部分) 19%(15%)
公益法人等(年800万円超の部分) 19%

「協同組合等・特定の医療法人」については、説明が複雑になるため割愛します。どの税率にしても、借地権の譲渡益(売却益)にこれらの税率をかければ、譲渡所得税(法人税)が出ます。

実際の計算例

ここまでの説明に、具体的な数字を当てはめて実際に計算してみましょう。まず、計算式をもう一度書きます。

売った金額-(権利金+諸費用+承諾料)

そして、それぞれの金額が下の通りだったとします。

売った金額 6000万円
権利金 3000万円
諸費用 1000万円
承諾料 600万円

これを上の式に当てはめると、下のようになります。

6000万円-(3000万円+1000万円+600万円)

これを計算すると「6000万円-4600万円=1400万円」です。この計算例では、譲渡益は1400万円となります。

(なお、「それぞれの金額をどう出したか」はこちらでまとめています)

1400万円にかかる税金は?

ほとんどの企業は「中小法人」なので、中小法人の税率を採用します。その年度に他の利益も当然あったでしょうが、ここでは「借地権の譲渡益だけ」で計算します。

計算の流れを箇条書きしていくと、下記の通りです。

  1. 税率は「800万円」を境目に変わる
  2. 1400万円は「800万円・600万円」に分けられる
  3. 800万円には「19%」の税率がかかる
  4. 600万円には「23.2%」の税率がかかる
  5. それぞれの税額を合計すればいい

そして、それぞれ計算すると下のようになります。

  • 800万円の方…152万円
  • 600万円の方…139.2万円
  • 合計…291.2万円

このように「大体290万円」となります。あくまで大雑把な目安ですが、借地権を6000万円で売れたら、法人税は290万円程度になると思っておくといいでしょう。

290万円を300万円とするとちょうど20分の1で、5%となります。「法人税は、借地権が売れた金額の5%」を一つの参考値にするのもいいでしょう。

それぞれの金額をどう出したか

下の通り、それぞれの金額の算出の根拠を書いていきます(計算例とはいえ、リアルな金額を使う方がいいため)。

以下、それぞれの説明です。

売った金額

まず、この計算例では「更地価格=1億円」と考えました。更地価格とは「借地権などが一切何もない、普通の土地としての価格」です。
ここから「売った金額=6000万円」としたのは、借地権割合は60%が多いためです。借地権の価格は下の式で出ます。

更地価格×借地権割合

これはあくまで目安ですが、国が決める評価額などはこれで計算されています。そして、1億円に60%をかけると6000万円なので「売った金額=6000万円」としました。

(実際には借地権価格の通りで売れるとは限りません。多少安くなることが多いものです)

権利金

借地権の権利金には、借地権価格の3~7割という相場があります。上に書いた通り、この例での借地権価格は6000万円です。

3~7割だと幅があるので、中間をとって5割としました。6000万円の5割なので「3000万円」です。

補足

なお、権利金の相場には「更地価格の6~9割」という、2倍近く高くなる説もあります。「借地権価格」ではなく「更地価格」の6~9割です。

もしこの相場を採用する場合、権利金と借地権価格がほぼ同じ金額になります。そのため、この計算例では「権利金=6000万円」となりますが、高すぎると感じたため、前者の相場を採用しました。

(権利金の相場については、下の記事でも詳しく解説しています)

諸費用

これは特に金額が決まっていません。整地が必要かどうかも物件によって変わりますし、不動産会社を間に立てるかどうかで、仲介手数料の有無もパーセンテージも変わります。

このため、今回の計算例では仮の数字として「1000万円」としました。

承諾料

借地権の譲渡では、承諾料の相場は「借地権価格の10%」が目安となります。今回の計算例では「借地権価格=6000万円」なので、その10%ということで「承諾料=600万円」です。

(なお、下の記事では地主の承諾を得る際の書類の書き方と合わせ、承諾料の相場についても解説しています)

借地権の更新料は法人税の会計でどうなるか

緑の電卓

借地契約の期限が来ると「更新」することがあります。わかりやすくいうと「延長」です。

このとき、地主に対して更新料を支払いますが、その会計が法人税の計算でどうなるかも気になる点でしょう。これについてポイントをまとめると下のようになります。

以下、それぞれのポイントについて説明します。

借地権の更新料は損金算入されない

更新料は企業にとってコストです。そのため、普通の感覚では「損金」に算入されます。

実際、借地権でなく「建物の賃貸」の場合、更新料は損金になります。正確には「5年、もしくは賃借期間での減価償却」という扱いです。「分散して徐々に経費にしていく」ということですね。

建物の賃貸では上記のようになりますが、借地権の更新料ではそうなりません。

資産計上し、借地権価額にプラスする

借地権の更新料は「資産」とみなされます。そして、あなた(の法人)が持っている借地権の価額に「プラス」されます。

なぜコストなのに価値にプラスされるのか

これは簡単にいうと「借地権という権利に対して、エネルギーを注入した」ためです。確かに現金の流れ(キャッシュフロー)を見れば、更新料は明らかなコストになります。

しかし、その更新料によって、あなたの借地権は強化されたわけです。期間が延びることによって、より強力な借地権になったわけですね。

このため「借地権の資産価値が上がった」とみなされ、「借地権価額に単純加算」されるのです。

借地権の「経年劣化分」は、損金算入できる

借地権の更新料でも、損金算入される部分があります。これは一言でいうと「借地権が経年劣化した分」です。

パソコンなどの資産でも同じですが、資産が経年劣化した分は、損金に算入できます。(個人事業主でいうと、経費算入できます)

借地権の同様に、契約の更新時に「劣化分を損金算入できる」わけです。

損金算入分の計算式

損金算入する分の計算式は、下のようになります。

更新直前の借地権の帳簿価額×(更新料÷更新時の借地権時価)

これは「法人税法施行令第139条」に書かれているものです。

実際の計算をすると複雑になるので、ここでは割愛します。しかし、このように「損金に算入される部分もある」「その計算式もある」ということは、理解しておくと役立つでしょう。

(なお、借地権の更新料の相場は下の記事で詳しく解説しています)

借地権の法人税の「認定課税」とは?

電卓と家の積み木

借地権の法人税について調べていると「認定課税」という言葉がよく登場します。これが何かを箇条書きで説明すると、下記の通りです。

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

権利金・地代のない契約に国が贈与税を課すこと

認定課税とは何かを一言でいうと、権利金や地代の支払いがない借地権の契約について、国が贈与税を課すことです。課されるのは「土地の借り手」となります。

このルールについての詳しい説明は、下の段落をご覧ください。

権利金・地代の支払いがないと「認定課税」をされる

認定課税を免れる方法

認定課税を免れるには「土地の無償返還の届け出」が必要です。詳しくは下の段落で説明しています。

「無償返還の届出」をしていれば、認定課税が免除される

社長個人の土地を使う場合も認定課税になる

中小企業でよくあるのは、社長が個人で所有している土地を、会社に無料で提供するというものです。特に同族会社だとやってしまいがちですが、法律的には社長と会社はまったく別のものになります。

つまり、たとえ自分の会社であろうと「無料で借地権を与える」というのは「贈与」になるのです。そして、贈与によって利益を受けた会社に贈与税が課されます(これも認定課税です)。

この認定課税を避ける方法は、上にも書いた通り「無償返還の届け出」をすることです。

借地権の法人税の「通達」とは?

書類を読むビジネスマン

通達とは「国からの連絡」のようなものです。連絡というと弱く聞こえるかもしれませんが、通達は法律とほぼ同じ効力を持ちます。

法律の改正には時間がかかるので、まずは通達を先に出すわけです。そして、借地権の法人税に関する通達は、主に下のようなものがあります。

まだ他にもありますが、これらについて「どのような内容か」を解説していきます。

使用の対価としての相当の地代

相当の地代とは「相場どおりの普通の地代」ということです。相場より安い地代で土地を貸していると、その割引分を贈与したとして認定課税されます。

国税庁の通達では、相当の地代は「年間で、更地価格の8%」としています。

相当の地代を引き下げた場合の権利金の認定

「相当の地代」は、引き下げることもできます。土地の価値が下落し「これまでの地代では高くて割が合わない」となった場合などです。

このように「正当な事由があって引き下げる」場合は、認定課税をされません。しかし、正当な事由がない場合はその引き下げ分が贈与と見なされるルールです。

通達では見出しのように「~権利金の認定」となっています。しかし、一般的な感覚としては「権利金」の部分は無視した方が意味が通じる内容です。

通常権利金を授受しない土地の使用

これは「権利金を支払う慣行がない土地」を指しています。普通は権利金を支払わないと、その金額分の認定課税を受けます。

しかし、権利金の慣行がない土地では、この認定課税がありません。この通達ではそれを書いています。

権利金の認定見合せ

これは「無償返還の届出」がされていたら課税しないという内容です。「認定見合わせ」の認定とは「認定課税」を指します。

「無償返還の届出」についてはこちらの段落で解説しています。

建物等の区分所有に係る借地権割合の計算

これは、建物などを区分所有している場合は、その所有権の割合に応じて借地権割合も計算するという通達です。たとえば、ある会社が「借地権割合60%」のビルに入居していたとします。

もしこのビルを「100%自社で所有」していたら、その会社の持つ借地権割合は「60%」となります(60%×100%なので)。

しかし、区分所有の割合が「50%」だったとしましょう。この場合は60%の半分なので、持っている借地権割合が30%になります。

区分所有とは

区分所有とは、「一つの不動産を複数の名義人で分けて所有すること」です。たとえばマンションの所有権はほとんどが区分所有になります。マンションという一つの不動産を、多数の住民で分けて所有しているわけです。

借地権で駐車場を経営するときの法人税

駐車場

会社で土地を借りて、駐車場経営に乗り出すこともあるでしょう。この時の法人税の計算は、下のようになります。

以下、それぞれ解説していきます。

駐車場収入は「益金」になる

駐車場を運営する以上、赤字であってもある程度の売上(駐車場収入)はあります。この収入はすべて「益金」です。

支払い地代は「損金」になる

借地で駐車場を運営している以上、毎月地代の支払いがあります。この地代はコストなので「損金」となります。

権利金・地代の支払いがないと「認定課税」をされる

借地権の契約をするとき、通常は権利金も地代も支払います。権利金の慣行がない地域もありますが、それは例外的なものです。

(国税庁の「路線価図・評価倍率表」で借地権割合が指定されていない地域は、権利金の慣行がない地域とされます)

そうした一部の例外を除けば、普通は権利金・地代を支払うものです。それがないということは、その法人が地主から経済的なメリットを受けたということで、贈与税の課税対象になります。

これは、地主が個人でも法人でも同じです。このような課税を「認定課税」といいます。

(なお、借地権に対する贈与税の課税は、下の記事で詳しく解説しています)

「無償返還の届出」をしていれば、認定課税が免除される

上記の「認定課税」を免れる方法もあります。それが「無償返還の届出」です。

「無償返還の届出」とは?

これは正確には「土地の無償返還に関する届出書」といいます。無償返還とは文字通り「タダで返す」ということです。

  • 借地権の返還時には「建物買取請求権」がある(借主側に)
  • これは、地主に建物を買い取ってもらえるもの
  • つまり、「有償の返還」になる

あくまで「建物買取請求権を行使する場合」ですが、この権利を行使するなら、借地権の返還は本来有償なのです。

しかし、こうした権利を行使せず「無償で返還する」というのが、借地権の無償返還です。

補足

建物買取請求権は、借地権の種類が「定期借地権」のときはありません。詳しくは下の記事で解説しています。

無償返還だと、なぜ認定課税を受けないのか

これは「地主から何のメリットも受けていない」ためです。認定課税をされるのは、権利金や地代などをまけてもらうという「経済的なメリットを受けたため」です。

そのメリットに対して課税されるわけですが、無償返還ならこうしたメリットがありません。メリットがない(利益が出ていない)以上、課税する理由がないのです。

無償返還を決めているだけでなく、届出が必要

無償返還なら認定課税がなくなる理由は、上記の通りです。しかし、これを届け出しなければ、税務署はわかりません。

そのため、届出が必要になります。届出の条件は下の通りです。

  • 地主・借地人の連名で届出書を書く
  • 契約後、遅滞なく提出する
  • その「法人の納税地」の所轄税務署に提出する

それほど難しい内容ではありませんが、特に間違えやすいのは「法人の納税地」に出すということです。借地のある場所の税務署ではないということですね。

国税庁の説明

上記の内容について、国税庁のサイトでは下のように説明されています。

その借地権の設定等に係る契約書において、将来借地人がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、「土地の無償返還に関する届出書」を借地人と連名で遅滞なくその法人の納税地を所轄する税務署長に提出している場合
権利金の認定課税について(国税庁)

この引用文を要約したのが、ここまでの説明の内容です。

まとめ

国税庁の写真

以上、借地権の法人税について解説してきました。最後に要点を整理すると下のようになります。

借地権の法人税・まとめ
  • 法人税がかかるのは「借地権を売却して利益が出たとき」
  • 固定資産税は「建物の分」のみかかる
  • 権利金・地代の支払いがないと「認定課税」を受ける
  • 支払いがない場合だけでなく「少ない」場合も同じ
  • 認定課税は「借主側にかかる贈与税」のこと
  • 認定課税を避けるには「無償返還の届出」をする

借地権に関する税金のルールはもともと複雑ですが、特に法人税に関しては複雑になります。会計処理の間違いでトラブルを起こさないよう、税理士・公認会計士などの専門家によく相談しながら、税務を行うようにしましょう。