借地権の基礎知識

借地権を地主に売る時の4つのポイント!買取請求権があれば確実に売却できる!

借地権の売却を検討するとき、最初に浮かぶ選択肢の1つが「地主に売る」というものです。

「地主に買い取り義務があれば簡単だけど、そんな義務があるのだろうか」
「地主に売れない場合は、赤の他人に売れるのだろうか」

このような疑問を抱えている人も多いかと思います。まず、それぞれの結論を書くと下記の通りです。

この記事では、上記の2つのポイントを含め、借地権を地主に売るときに知っておくべきポイントをまとめます。地主側から買い戻す場合のポイントもまとめているので、借り主・地主の双方に参考にしていただけるでしょう。

借地権を地主に売るときの4つのポイント

話し合うビジネスマン

借地権を地主に売るとき、特に知っておくべきポイントをまとめると、下の4点です。

  1. 更新時まで待てば、必ず買い取ってもらえる
  2. 更新時でなければ地主が買い取る義務はない
  3. 「定期借地権」の場合も、地主が買い取る義務はない
  4. 地主に売れない場合は第三者に売るのもあり

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

更新時まで待てば、必ず買い取ってもらえる

その借地権が「旧借地権」か「普通借地権」であれば、更新のタイミングまで待つことで、必ず地主に買い取ってもらえます。この2つの借地権には「建物買取請求権」という権利があるためです。

(詳しくは下の段落で解説します)

建物買取請求権とは?

更新時でなければ地主が買い取る義務はない

逆に更新時でない「普通のとき」だったら、地主が建物&借地権を買い取る義務はありません。この場合、地主は買い取りを拒否することも、安値で買い叩くこともできます。

もし更新が近いのであれば、地主に売るのは更新時まで待つ方がいいでしょう。

「定期借地権」の場合も、地主が買い取る義務はない

「更新まで待てば必ず買い取ってもらえる」というのは、旧借地権・普通借地権の2種類のみです。定期借地権という種類の場合、地主が借地権・建物を買い取る義務はありません。

定期借地権とは「更新のない借地権」です。期限が来たら更地にして土地を返還するルールになっています。

このため、地主に借地権を売るどころか「取り壊し費用が必要」となります。定期借地権は旧借地権・普通借地権と比較して、借り主に不利なルールです。

地主に売れない場合は第三者に売るのもあり

地主に売れないときは、第三者に売ることもできます。第三者への売却については、地主が完全に止めることはできません。

裁判所の許可があれば売却できる

一応、地主は一時的に止めることはできます。しかし、借地権は借り主の「所有物」(所有する権利)なので、本来は借り主が自由に売却してもいいものです。

そのため、地主がどうしても承諾しないのであれば、裁判所に訴えることで売却できるようになります。このときは裁判所が「承諾料」の金額を決め、借り主が地主にそのお金を払います。

建物買取請求権とは?

家の模型を前に話し合う男女

借地権を地主に売るとき、特に活用しやすいのは「建物買取請求権」です。この権利の要点をまとめると、下のようになります。

  1. 期間が満了したときに、建物を地主に買い取ってもらう権利
  2. 「借地借家法13条」で規定
  3. 旧借地権・普通借地権に適用される
  4. 定期借地権には適用されない
  5. 最後に買い取ってほしい借り主は、普通借地権で契約しよう

それぞれ詳しく説明していきます。

期間が満了したときに、建物を地主に買い取ってもらう権利

建物買取請求家とは「借地権の期間が満了したときに、建物を地主に買い取ってもらう権利」です。地主からしたら「買い取る義務」となります。

「借地借家法13条」で規定

建物買取請求権は、借地借家法の第13条で規定されている権利です。原文を引用すると下の通りです。

(建物買取請求権)
第13条
1.借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
(後略)
借地借家法第13条(Wikibooks)

上記の文章をわかりやすく書くと、下のようになります。

いつ? ①…期間が満了した時、②…契約の更新がない時(両方満たす時)
誰が? 借り主が
誰に? 地主に
何を? 建物や、借地権に付随するもろもろを
どうできる? 時価で買い取るよう、請求できる

建物買取請求権は、どんな借地権でも必ず適用されるわけではありません。適用される借地権・されない借地権を解説していきます。

旧借地権・普通借地権に適用される

一般的な借地権には下の3通りがあります。

  • 旧借地権
  • 普通借地権
  • 定期借地権

建物買取請求権が適用されるのは、この3つのうち「旧借地権」と「普通借地権」です。

旧借地権とは?

旧借地権とは、1992年7月までの借地権です。この期間に結ばれた借地契約は、すべて旧借地権になっています。

一方、1992年8月からは「新借地権」になっています。新借地権は下の2つです。

  • 普通借地権
  • 定期借地権

このうち、普通借地権だけに建物買取請求権が発生し、定期借地権には発生しないということです。

定期借地権には適用されない

定期借地権とは下のようなものです。

  • 更新がない
  • 期限が来たら必ず借地契約が終わる
  • その時、借り主は土地を更地にして返す(建物を取り壊して返す)

補足すると、借り主も地主も両方「継続したい」ということであれば、新規に別の契約を結び直すなどして、延長してもかまいません。しかし、最初に結んだ定期借地権自体は「一度終わる」ということです。

定期借地権なら、地主が建物を買い取る必要はありません。そのため「最後に建物を買い取るのは嫌だ」という地主の方は、普通借地権でなく定期借地権を選ぶのがいいでしょう。

(現在では旧借地権は選べないので、普通借地権か定期借地権のどちらかになります)

最後に買い取ってほしい借り主は、普通借地権で契約しよう

ここまで書いた内容をまとめると、「最後は地主に借地権・建物を買い取ってほしい」と思っている借り主は、普通借地権を選択すべきといえます。ただ、普通借地権は定期借地権より借り主の権限が強く、地主の権限が弱いものです。

そのため「普通借地権では契約したくない」という地主もいます。その分借地契約にこぎつけるまでの交渉が、少々難しくなると考えてください。

借地権を買い戻したい地主の注意点・3つ

札束を出すビジネスマン

これまでは「借り手が地主に借地権を売る」ケースを解説してきました。逆に地主の方から「借地権を買い戻したい」ということもあるでしょう。

この場合の注意点をまとめると、下記の通りです。

  1. 期間満了前の買い戻しは高くつく
  2. 買い戻さなくても「共同売却」という手もある
  3. 更新拒絶通知は、期限の6ヶ月~1年前までに出す

それぞれ詳しく説明します。

期間満了前の買い戻しは高くつく

普通借地権なら期間が設定されています。この期間が満了する前に買い戻しを提案すると、更新時よりも高めに買い取ることが必要です。

期間満了時でも、更新をせずに契約を終わらせるなら、建物&借地権を買い取る必要があります(借り主の建物買取請求権)。満了時でもこのような「買い取り義務」はありますが、それでも「約束の期間は守った」ということで、価格が高くなることはありません。

一方、満了前に地主の都合で買い取りたいというのは、あえて悪くいえば「契約違反」です。そのため、いわゆる違約金と同じ感覚で高めの買取価格を設定されても文句はいえません。

更新のタイミングが近いようなら、焦らずに更新時まで待つようにしよう。

買い戻さなくても「共同売却」という手もある

地主の方が借地を買い戻したい理由として「底地だけでは高く売れないから」というものは多くあります。借地権を買い戻し、底地権とセットにすれば(要するに元の普通の所有権にすれば)高く売れるわけですね。

この方法で高く売ること自体は良い発想です。ただ、高く売ることのみが目的であれば、必ずしも借地権を買い戻さなくてもいいのです。

借地人と共同して、借地権とセットで売り出す

要は、底地権と借地権がセットになっていれば高く売れるのです。それぞれの権利を「誰が持っているか」は関係ありません。

  • あなた一人が持っている(買い戻した状態)
  • 底地権はあなた、借地権は借り主が持っている(共同売却)

どちらの状態で売っても、売れる値段はまったく変わらないのです。例外的に変わるケースもありますが、ほとんどは変わりません。

新しく買う所有者にとっては、どちらのパターンであろうと「契約が終わったら両方セットで自分のものになる」ためです。一応、契約書を二通書く手間はありますが、そのくらいは不動産の購入という一大イベントなので、大したことではありません。

借地人も借地・建物を売りたがっているかがポイント

ここで重要になるのは、借地人(借り手)も借地権と建物を売りたがっているかということです。売りたがっていれば共同売却が成立しますし、売りたがっていないようなら、共同での売却はできません。

なお「借り主が売りたがっているなら、直接買えばいいのでは?」と思うかもしれません。それでもいいのですが、それだと契約手続きや不動産登記の手続きの回数が1回分多くなります。

借り主も売りたがっているのであれば、共同売却を選ぶ方が、契約・登記の手続きが少なくて済むのです。

更新拒絶通知は、期限の6ヶ月~1年前までに出す

期間満了のタイミングで借地権を買い戻すときは、「更新拒絶」をすることになります。そして、更新拒絶は「期限の6カ月~1年前までにする」というルールです。

これは借地借家法の26条1で定められているルールで、下のように書かれています。

少々難しい言葉ですが、要約すると下の通りです。

  • 1年~6カ月前までに、
  • 「更新をしない」という通知や、
  • 「条件を変更する」という通知をしなければ、
  • その契約は「これまで通りの条件」で更新される

このようなルールなので、買い戻しをしたいのであれば、期間満了の1年前になったら通知するようにしましょう。そして、遅くとも6カ月前までに通知しなければいけません。

「いけない」ということはありませんが、一度更新されてしまうと「期間途中での買い戻し」となるので、条件はさらに不利になります。

なお、この通知期限のルールは借り主の側にも適用されます。借り主も「契約を終了させたい」と思うなら、上記の期限で地主に通知しなければいけません。

まとめ

売却が成立して握手しているイメージ

以上、借地権を地主に売る時のポイント、逆に「地主が買い戻す時のポイント」をまとめてきました。最後に要点を整理すると下記の通りです。

借地権を地主に売る時のポイント
  • 旧借地権・普通借地権なら、借り主には「建物買取請求権』がある
  • これにより更新時であれば、必ず地主に買い取ってもらえる
  • 逆に定期借地権では、建物買取請求権がない
  • このため、期間満了時には更地にして返還するのが原則
  • 地主が買い戻したいときは、期限まで待つ方が有利
  • 期限が切れる前に買い戻すと、価格が高くなることが多い
  • どちら側も、契約の更新をしない時は、通知を6カ月~1年前までにする

借地権は底地権とセットで大きな威力を発揮する権利であり、一番価値を感じてくれるのは、その底地権を持っている地主です。このため、借地権を売りたいのであれば、地主への売却は最初に検討すべきといえるでしょう。

地主に売れなくても、共同売却や部分交換など他の選択肢もあります。あらゆる選択肢を比較検討した上で、最善の方法を選ぶようにして下さい。