借地の契約を結ぶときにも、当然「契約書」が必要になります。この契約書について、下のようなことで迷うケースもあるでしょう。
「どう作成すればいいのか」
「なくした場合はどうすればいいのか」
これらの疑問について、結論をまとめると下記の通りです。
借地権は相手との交渉が難航することもありますが、交渉がまとまった後の契約書の作成については比較的簡単です。この記事を読んでいただくことで、契約書の作成に関する疑問を払拭していただけるでしょう。
借地権の契約書の雛形・テンプレートの探し方
借地権の契約書を作成するとき、多くの人はすでに作成された雛形・テンプレートを使うものです。その探し方についてポイントをまとめると下のようになります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
借地権の契約書の形式は自由
借地権の契約書に、法律で決まった形式はありません。双方が合意・納得するものであれば、どんな形式でもOKです。
ただし、決めるべきことが書かれていなければ後でトラブルになる可能性があります。たとえば「毎月の地代」などです。
そうした「必ず書くべきこと」を自分でリストアップするのは大変です。そのため、すでに作成されているひな形を、インターネット上で探してダウンロードするのがいいでしょう。
Web上で専門家が提供するひな形を使うのがベスト
借地権の契約書は、Web上で司法書士・弁護士・行政書士などの専門家が無料のテンプレートを提供しています。ワード・エクセル・PDFなどあらゆる形式で提供されているので、それらを活用するのがいいでしょう。
稀に有料のひな形や入力システムもあるようですが、ワードやエクセルを使える方であれば、無料のテンプレートで十分といえます。
複雑な契約では専門家に相談すべき
借地人・地主がお互いに気心の知れた関係であるなど、契約が簡単にできるときは上記のように無料のひな形を使うだけで十分です。しかし、「赤の他人」「込み入った契約」「金額が大きい」などの事情で、慎重に進めるべき場面もあるでしょう。
このような時には、自分で契約書を作成するにしても、専門家に一度チェックしてもらうべきです。あるいは最初からすべて相談した方がいいこともあります。
30分程度なら無料相談に対応してくれる専門家も多くいるため、そうした専門家の事務所に問い合わせてみるといいでしょう。
借地権の契約書の文例・内容は?主要3パターンで解説!
借地権の契約書の種類は、シチュエーションに応じて様々です。ここでは、下のような主要3パターンで文例を示します。
以下、それぞれの文例です。
地主が借地権&建物を買い取るときの契約書
地主が借地権契約を終わらせたいとき「借地権と建物をセットで買い取って終わらせる」ということがあります。その時の契約書に書く内容は下のようなものです。
(各条項にこういう内容を書くのが無難、という内容です。必ずしもこの通りにする必要はありません)
条項 | 内容 |
---|---|
1条 | 今日付けで契約を解除する |
2条 | いくらで買い取る |
3条 | いつまでに、どんな方法で支払う。遅れたらどうする |
4条 | 支払い後いつまでに明け渡す。遅れたらどうする |
5条 | この契約書に書く以外の取り決めは、まったく何もない |
3条・4条の「遅れたらどうする」というのは、具体的には「1日あたり○○円」などとします。5条の「他にまったく何もない」というのは「ここに書いてあること以外は一切気にしなくていい」ということを、お互いに確認するためのものです。
借り手の事情で借地を返還する場合の契約書
借地の返還にも多くのパターンがありますが、借り手側の事情で返還する場合は、契約書の内容は下の例のようになります(これもあくまで一例です)。
条項 | 内容 |
---|---|
1条 | 本日付けで契約を解除する |
2条 | いつまでに更地にして明け渡す。この解体期間の賃料は請求する・しない |
3条 | 明渡しが遅れたら1日あたり○○円払う |
4条 | ここに書かれている内容以外には、何もない |
1条の「本日付けで解除」というのと、4条の「これ以外にはなにもない」というのは、先に紹介した「地主が買い取る」パターンと同じです。ほとんどの契約書でこの始まり・終わりが共有されると思ってください。
途中の内容も似たようなものですが、「借り手が更地にして返還する」というのは、買い取りに比べるとシンプルなものです。地主の買取価格の設定や、入金方法・入金期限などの情報が不要になるためです。
そのため、上記のように多少短くなりますが、全体的には似たような形式だと思ってください。
借地権を相続したときの契約書
借地権の相続では、本来契約書は不要です。借地権という資産は、自動的に相続されるもので、あえて契約をしなくても「相続した人のものになる」ためです。簡単にいうと「地主は相続に関して何もいえない」ということです。
ただ、稀に契約書がない場合など、相続したときにあえて契約書を作成する必要があります。このときの文例は完全にケースバイケースですが、あえて「比較的多いと思われるパターン」で書きます。
条項 | 内容 |
---|---|
1条 | 借地権の存在を確認する |
2条 | 借地権の期限 |
3条 | 利用用途 |
4条 | 地代 |
5条 | 滞納した場合の罰則 |
6条 | その他 |
相続に関しては「そもそも、生前にどこまでハッキリ契約が結ばれていたのか」などにより、契約書の内容が大きく変わります。上記は「これらの項目がすべて契約書に書かれていなかった場合」のものと思ってください。
借地権の契約書を紛失したらどうすればいい?
紛失などの原因で「借地権の契約書がない!」ということもあるかと思います。そのような時も心配は要りません。ポイントをまとめると下のようになります。
以下、それぞれのポイントについて説明します。
紛失しても借地権の売却などの手続きはできる
借地権の契約書を紛失していても、借地権の売却などの手続きは可能です。契約書なしで手続きをするための条件は、次の段落で説明します。
地代支払いの事実と、建物の登記を証明できればいい
契約書なしで借地権の売却などの手続きをするには、下の2点を証明できればOKです。
- 地代を支払っている
- 建物が登記されている
上記2点の証明は、難しいものではありません。
- 借地である以上、地代は支払っているに決っている
- 建物がなければ、そもそも借地権は発生しない
後者については、何十年も前も昔の契約だと「登記していないのに借地権の契約をしている」という可能性もあります。しかし、通常の借地契約では、マイホームや店舗などの建物を建てた上で借地権が発生するので、そのようなことはまずありません。
それぞれを証明する方法
証明する方法は、それぞれ下のようになります。
支払いの事実 | 領収書・振り込み通知書・取引履歴証明書(銀行のもの) |
---|---|
建物の登記 | 登記簿謄本を法務局で直接取得するか、郵送で取り寄せる |
支払いの事実については、地主から領収書をもらっているならそれで十分です。領収書がない場合はATMなどの振込み通知書や、銀行のカウンターでもらえる取引履歴証明書等などを利用しましょう。
登記簿謄本は、全国どこの法務局でも取得できます。他の都道府県の不動産であっても問題ありません。
郵送での取り寄せはWebから申請できます。郵送で申請して郵送で受け取ることも可能ですが、これは時間がかかるものです。そのため、郵送で取り寄せるならWebから申請する方がいいでしょう。
まとめ
以上、借地権の契約書について説明してきました。最後に要点を整理すると、下記の通りです。
- 契約書の形式は自由
- Web上の雛形をダウンロードして使う
- Excel・Word・PDFなど、さまざまな雛形がある
- 地代などの重要な内容はすべて抜けがないようにする
- 専門家に相談して完成させるのがベスト
- 紛失していても各種の手続きはできる
借地権に限らず、あらゆる契約書の作成や法的な手続きは、意外に自力でもできるものです。ただ、万が一のことを考えるとやはり専門家に相談するのが安心です。
特に借地権はトラブルになりやすい契約の一つなので、司法書士などの専門家に一度相談することをおすすめします。