借地権の基礎知識

借地権と底地を同時売却するメリット・デメリットは?割合の決め方なども解説!

あなたが借地権や底地権の売却を検討していたら、当然「できるだけ高く売りたい」と考えるでしょう。このとき、最も有効な選択肢の一つが「同時売却」です。

同時売却とは「借地権と底地を一緒に売る」ことを指します。これについて「どんなメリットやデメリットがあるのか」という初歩的な疑問もあれば、「割合の決め方を知りたい」という高度な疑問もあるでしょう。

この記事では、同時売却に関するこれらの疑問点について、解説していきます。この記事を読んでいただき、無事に同時売却に成功すれば、単独での売却に比べてかなりの高値で売ることができるでしょう。

借地権と底地を同時売却するメリット

緑の電卓と家の模型

借地権と底地を同時に売却するメリットは、主に下の2点です。

以下、2つのメリットについて解説していきます。

借地権を高く売れる

借地権と底地権は、セットで初めて価値が出るものです。単独でも利用できますが、何かと不自由なことが多くなります。

そのため、単独では売却してもあまり高い値段が付きません。同じ広さの土地の借地権でも、底地権とセットで売ることで高値が付きやすくなるのです。

これは底地権を持つ地主にとっても同じです。特に底地権は借地権以上に権利が弱いため、セットでないと大きく価値が落ちてしまいます。同時売却は、底地権を持つ地主にとって、さらにメリットが大きくなるのです。

借地権の方が権利が強いのは、その借地を出たら生活・営業ができなくなることが多いためです。底地権を握る地主は多少不自由でも「生活に支障はない」ため、法律で保護されにくいのです。

買い手が見つかりやすい(早く売れる)

借地権と底地を同時に売ると、高値で売れるだけでなく「早く売る」ことも可能となります。価値が高いので欲しがる人も増え、それだけ早く売れるということです。

このため「安くてもいいから早く売りたい」というケースでも有利になります。地主との交渉さえスムーズにまとまれば、早期の現金化も実現できるでしょう。

コーヒーカップ・ソーサー理論

借地権と底地権の同時売却では、しばしば「コーヒーカップ・ソーサー理論」が話題にのぼります。ソーサーとはカップを置く小さなお皿のことです。

コーヒーカップとソーサーは、単独では価値が落ちてしまいます。セットで初めて意味が生じるものです。

コーヒーカップならまだ単独でもいいのですが、ソーサーは単独ではほとんど価値がありません。このため、借地権と底地権はそれぞれ下のように例えられます。

  • 借地権…コーヒーカップ
  • 底地権…ソーサー

上にも書いた通り、底地権の方が権利が弱いため「ソーサー」に例えられるわけです。

借地権と底地を同時に売るデメリット

暗いイメージの家の積み木

借地権と底地を同時売却するデメリットは下記の通りです。

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

地主・借主への説得が必要

同時売却をするには、当然「相手方」を説得する必要があります。あなたが借り主なら地主を説得し、あなたが地主なら借り主を説得します。

このとき特に揉めるのは「割合」です。一つの土地に対して「借地権・底地権の価値の割合が、それぞれどれだけか」ということで揉めるのです。

基本的には「国が定めた借地権割合を参考にして、話し合いで決める」というやり方になります。この点は下の段落をご覧ください。

底地と借地の同時売却での「割合」はどうなる?

日頃からトラブルを起こさないことが肝心

同時売却に限らず、地主と借り主の連携が必要になるケースはよくあります。このようなとき「双方が得するように」日頃からトラブルを起こさないように配慮することが必要です。

「トラブルを起こさない」というのは、どんな人間関係でも完璧に実行するのは難しいものです。しかし、借地権に関してどんなトラブルがよく起こるのかを理解していると、ある程度実行しやすくなります。

借地権のトラブルについては、下の記事を参考にしていただくといいでしょう。

地主側・借主側が撤回するリスクもある

同時売却は、片方が途中で売却を撤回してしまうと、白紙に戻ってしまいます。自分一人で売却するときはこのようなリスクはありません。しかし、地主(あるいは借り主)というパートナーが1人加わると、こうしたトラブルの可能性も高まるのです。

ただ、このようなリスクはあっても「同時売却の方が高く売れる」のも事実です。また、リスクといってもあくまで「売れなくなる」だけで、大きな実害が出るわけではありません。

何が何でも早期に売らなければいけない場合は、単独での売却も検討

上のように書いたものの、たとえば「相続税の支払いができない」「支払いのために、借地権を売却しなければいけない」というケースもあるでしょう。このように「何が何でも短期で売らなければいけない」というときには、上記の「売れなくなる」というデメリットは死活問題だといえます。

このため、こうした「急ぎのケース」では、同時売却はあきらめて単独での売却をすべきでしょう。これは同時売却が悪いというより、人間のどんな仕事でも「急ぐ度合い」によって、選択肢が大きく変わるということです。

撤回されないためにもコミュニケーションを重視

借り主にしても地主にしても、同時売却の方が高く売れるのは間違いありません。そして、一度途中で撤回したら二度目のチャンスはないでしょう(相手は怒るはずですから)。

こう考えると、少なくとも金銭的なメリットとデメリットを考えたら、相手側が撤回する可能性は低いのです。他の原因で撤回するとしたら、多いものは「感情のもつれ」でしょう。

契約を進めているうちに「相手側の態度が気に入らなくなった」というようなケースです。これはビジネスの商談でもたまに見られるケースですが、こうなると同時売却は非常に困難になります。

せっかくの同時売却のチャンスをふいにしないためにも、相手側の感情に常に配慮するようにしましょう。

底地と借地の同時売却での「割合」はどうなる?

家の模型と円グラフ

底地と借地を同時に売却するとき「それぞれの割合はどうなるのか」という点も気になるでしょう。これについてポイントをまとめると下のようになります。

以下、それぞれのポイントについて説明します。

路線価の「借地権割合」を参考にする

底地権と借地権の割合について、もっとも公的な数字は「借地権割合」です。これは国税庁が公開している「路線価図」に書かれています。下の画像を見てください。

路線価図画像引用元:路線価図・評価倍率表「東京都>中央区>日本橋」

あちこちに数字が書かれていますが「10,800A」や「1,960B」というように、数字の末尾にアルファベットが付いているのがわかるでしょう。これが借地権割合です。

借地権割合の見方

借地権割合の記号の見方(意味)は下記の通りです。

A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

たとえばAの90%なら、その土地の価値の90%は借地権が占めているということです。もし底地と同時売却して1000万円になったら、借地・底地の価格はそれぞれ下のようになります。

  • 借地…900万円
  • 底地…100万円

つまり、借地人が900万円を手にし、地主は100万円しかもらえないということです。「納得がいかない」と地主は思うかもしれませんが、借地権割合に従って決めるならこのようになります。

(借地権割合自体は国が決めた数字なので、いいかげんな指標ではないのです)

ただ、そもそも借地権割合で決めるというルールはありません。上記はあくまで「借地権割合にしたがって決めるなら」ということです。

最終的には話し合いで決める

最終的には、同時売却での割合をどうするかは話し合いで決めることになります。上では東京の日本橋で90%が多かったので、90%という例を出しました。

しかし、全国的に見ると借地権割合は60%~70%が主流とされています。多くのケースでは60~70%で話し合いが始まり、そこからどちらかが譲歩して決定すると考えてください(借地権割合が60%の土地なら、わかりやすく50%ずつで決着する可能性もあるでしょう)。

借地人が底地を買い取る場合のポイント

家の模型と電卓

借地人(借地権者)が底地を買い取るときのポイントをまとめると、下のようになります。

以下、それぞれのポイントについて説明します。

一番高値で売れる相手なので、地主も応じてくれやすい

地主にとって、底地を一番高く売れる相手は借地人です。これはダイヤモンド社(Zaiオンライン)の記事でも『「借地」や「底地」を売却・処分するにはどうしたらいい?~「底地」は、”借地人”に買ってもらうのがベスト~』と、タイトルですでに書かれています。

このように地主にとってもメリットのある話なので、底地の買取り(地主にとっては売却)は、応じてもらえる確率が比較的高いといえます。

地主の家で相続が発生したときは、買取りのチャンス

底地を買い取る一番のチャンスは「地主が売りたがっているとき」です。そして、地主が底地を売りたがるケースで一番多いのは「相続時」といえます。

前の地主が亡くなって、そのお子さんや奥さんなどが土地を相続するときに、売りたがるケースがよくあります。理由は「相続税の支払いができない」「土地の管理が面倒」などです。

「相続税の支払い」について

土地を相続したら、不動産という「資産」は増えます。しかし、資産は現金ではありません。そのため、これで税金を支払うことはできません。

「物納」として土地で税金を納める方法もあるのですが、手続きに手間がかかるため、多くの人は現金で納税したいと思うものです。そして、現金の遺産が足りなければ「土地を売って現金化する」ことを、多くの相続人は考えるのです。

このようなときが、借地人にとって底地を買い取るチャンスだといえます。

地主とのコミュニケーションをできるだけ日頃から取っておく

相続時がチャンスといっても、もちろん地主さんが亡くなるのを待つわけではありません。大事なのは下の点です。

  • 相続時は、遺族にとっても土地の扱いに困るときである
  • そのときにスムーズに買い取れるのは、遺族にとっても良いこと
  • しかし、買い取るにはまとまった金額のお金が必要
  • だから、事前に準備しておく方がいい
  • そのためには、地主との日頃のコミュニケーションが役立つ

お金については、貯金が多ければ「すぐ買い取る」こともできるでしょう。しかし、底地を買い取るというのは、多くの借地人にとって「その後の家計を大きく変える内容」です。早めに目処が立つ方が、家計管理にとってもプラスになります。

そのため、地主さんの家で相続が発生しそうなら、その話が早めに入ってくる方がありがたいわけです。地主さん本人も「自分が死んだ後、家族に負担をかけたくない」と思っている可能性があります。また、家族の方も「どの道売るなら、先に売っておきたい」と思うかもしれません。

最終的には「地主さんご本人や、ご家族がどう考えているか」によって、借地人側の心の準備も変わります。だからこそ、地主さん側の状況や希望などがわかるよう、ある程度のコミュニケーションを取っておく方が得策なのです。

底借同時売却での契約書の書き方

契約書

契約書の書き方について、ポイントをまとめると下の通りです。

以下、それぞれ詳しく説明します。

多くの業者は借地・底地でそれぞれ1通ずつ作成

借地と底地を同時に売るときの契約書は、多くの不動産会社が「それぞれ1通ずつ作成する」というルールにしています。

  • 借地権の売買契約書
  • 底地権の売買契約書

上記のように1通ずつを作成するということです。これについては、法律的な決まりはありません。

しかし、多くの不動産会社が「1通ずつ作成」としているのが現状です。たとえば不動産会社の「未来堂株式会社」の解説では「実際の契約では、土地(底地)売買契約書と、借地権売買契約書の2通を作成します」と書かれています。

「不可分一体」の特約条文を入れる

契約書が2通あると、当然「2通を連動させる」ことが必要です。売る側としては「自分の分だけ売れればいい」ともいえます。

しかし、買う側としては「片方だけ買っても意味がない」「両方揃わないならキャンセルしたい」と思うことが多いでしょう。このため、買い手との交渉を円満に進めるためにも、2通の契約書を連動させることが必要なのです。

やや専門的な言葉を使うと「不可分一体」の特約条文を入れます。たとえば、あなたが借地権を売る場合は「もう1通、底地権を売る契約書がある。その契約書と、この契約書の内容は不可分一体である」という内容の文章を入れるわけです。

このことは、センチュリー21グループの株式会社マーキュリーが説明されています。また、株式会社フリーダムリンクも「片方の契約が解除になると、買主が困るので連動させなければならない」という内容を説明しています。

書き方は普通の売買契約書と同じ

「連動させる特約条文」を入れる以外は、底借同時の売買契約書も、普通の土地の売買契約書と変わりありません。公益社団法人の不動産流通推進センターは、下のように説明しています。

(前略)
基本的には、通常の土地所有権の売買と同じであるが、
(中略)
貸主の地位を引き継ぐという条件付の土地売買契約になるという点が異なる。
(中略)
次のような条項を追加しておく必要があると考えられる。
(後略)
「底地」の売買契約書のつくり方(公益社団法人・不動産流通推進センター)

上記は「底地の契約書の書き方」です。「底地だけ」なので「底借同時」ではありません。

しかし、上記の解説でも「借地権に関する部分以外は、すべて普通の契約書と同じ」ということがわかります。ということは、底借同時の契約書でも、下のような書き方になるといえます。

  • 全体の書き方は、普通の契約書
  • そこに「借地権に関する内容」を入れる
  • ↑(逆に借地権を売る方なら「底地権に関する内容」を入れる)
  • 同時に売る場合、その内容は主に「連動の特約条項」である
  • よって、この条項さえ入れれば、あとはほとんど普通の契約書と同じ

実際には、借地権と底地権を同時に売る場合、業者を通すことがほとんどです。そして、契約書は基本的に業者が作ってくれます(むしろ、依頼者が作るとあまり歓迎されないでしょう)。

このため、借地権と底地権の同時売却でも、契約書の書き方や書式について、特に心配する必要はありません。

契約書は1通にまとめてはいけないのか?

「連動させるくらいなら、最初から1通の契約書にすればいいのでは?」と思う人もいるでしょう。法的には、これは可能です。借地人と地主が一緒に契約書を作成し、買い手がそれにサインをすればそれで完了します。

ただ、先にも書いた通り「業者を通す」と、別々にされることがほとんどです。このため、1通にまとめたいなら「業者を通さずに購入希望者を探す」必要があります。

業者が別々の契約書にする理由は?

これは多くの理由が考えられますが「その方が、仲介手数料を2件分とれるため」という考えもゼロではないでしょう。

もちろん、仲介手数料は「売却金額の3%」などのように、パーセンテージで決めます。このため「同時売却だったら合計の売却金額は同じなので、別々にしても変わらないのでは?」と考える人もいるかもしれません。

確かに「パーセンテージで決まる分」はその通りです。しかし、多くの業者はそれとは別に「1件5万円」などの固定報酬を設定しています。

「売却金額の3%+5万円」という風に、仲介手数料を設定しているわけです。この仕組みなら「5万円」の分は、2件別々に契約する方が儲かります。

「たかが5万円で…」と思うかもしれませんが、これが年間100件あったら、売上が500万円変わるわけです。もちろん、底借同時の売買はそんなにないので、これだけで年間100件に達することはないでしょう。

しかし、どんな契約でもこのように「少しずつ得すること」を考えていくと、その業者の売上は年間で大きく変わるということです。このような理由から「あえて別々の契約書にする」という業者がいてもおかしくはありません。

小さな手数料より「高く売ってくれるかどうか」を重視すべき

もちろん、このような営利目的ではなく「単純に1つ1つの契約をきっちり完了させたいため」という考えの業者も多くいるはずです。また、そもそもすべての業者が「契約書を別々にする」と決まっているわけではありません。

上のような営利目的での理由は、あくまで一部の業者のみ「可能性がある」ということです。また、そもそも利用者の側からしたら「1回限り」なので、手数料が数万円高くなったとしても、それほど大きな痛手ではありません。

それより、業者が底地・借地の同時売却を高値で成功させてくれる方が、よほど重要です。業者の能力や努力次第で、あなたが手にできる金額が数十万円から数百万円変わる可能性もあります。

それを考えたら、契約書が別々か1通だけかにこだわるよりも「業者の販売能力や信頼性だけを見る」方が合理的といえるでしょう。

同時売却以外の選択肢

木の積み木の家

ここまで読んで「同時売却以外にはどんな選択肢があるのか」と気になった人もいるでしょう。同時売却以外で借地権・底地を売る方法は下のようなものがあります。

いずれもシンプルな方法ですが、不動産という大きなものを売るときに「変わった方法」はあまりないと考えてください。以下、それぞれの方法について説明していきます。

地主・借り主に対して売る

これは最もシンプルな方法で、誰もが最初に考えるものでしょう。

  • あなたが借り主なら、地主に借地権を売る
  • あなたが地主なら、借り主に底地権を売る

上記のようなやり方になります。「一番高く買ってくれる可能性が高い相手」に売る方法なので、最初に検討すべき選択肢です。

特に「借り主が地主に対して売る」ケースについては、下の記事で詳しくまとめているので、こちらをご覧ください。

単独で買取業者に売る

これは一番早く決着する方法で、業者に直接買い取ってもらいます。通常の売却だと、業者は「仲介」をするので、買い手が現れるかわかりません。

しかし、業者買取りなら「その場ですぐ買ってもらえる」ので、早期に現金化できます。ただ、業者としては「売れるかわからない借地権・底地権」を買い取るため、リスクがあるわけです。

そのため、買取価格は基本的に安くなってしまいます。あくまで「安くていいから早く売りたい」という人のための方法だと思ってください。

(このようなケースでの業者への相談については、下の記事をご覧ください)

単独で第三者に売る

地主・借り主・業者のいずれでもなく、第三者に売るという方法もあります。これもやはり、その買い手にとっては「使いにくい権利」なので、買取価格は安くなるものです。

ただ、業者に払う仲介手数料の分はあなたの利益になります。大体5%程度なので、どちらかといえば「高く売ることの方が大事」です。しかし「自力で業者と同様に高く売る自信がある」という人は、この方法もいいでしょう。

地主の承諾なしで借地権を売ることはできるか?

これはできません。借地権の売却(譲渡)には、地主の承諾が必要です。ただ、「明らかに問題ないケースで地主がひたすら反対している」というときは、裁判所に訴えられます。

そして、裁判所が「売却を認めるべきである」と判断したら、地主に強制的に承諾させることができます。ただし、その際に裁判所が決める「承諾料」を、地主に支払うことが必要です。

(これらのルールについては、下の記事で詳しく解説しています)

まとめ

談笑する不動産オーナーたち

以上、借地権と底地の同時売却について解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。

借地権と底地の同時売却・まとめ
  • メリット…高く・早く売れる
  • デメリット…相手の説得が必要・撤回されることも
  • 割合の決め方…借地権割合を参考にして話し合い
  • 契約書…大抵2通作成。連動させる特約を入れる

借地人と地主の関係は難しく、多くの借地契約で両者の関係が悪化しているケースが見られます。しかし、同時売却は双方にとってメリットのある選択肢です。

これまでの関係で少々気まずいことがあったとしても、少しずつ関係を改善し、同時売却まで持っていけるように努力していただくといいでしょう。