借地権の基礎知識

借地権の立ち退きの正当事由とは?地主が支払う立退料の相場・計算方法も解説!

借地権付きの建物について、借り主・地主のそれぞれで下のような疑問・悩みを持つことが多いでしょう。

  • 借り主…地主から立ち退くように言われたが、従うしかないのか
  • 地主……借り主に立ち退いてほしいが、どのようにすればいいか

それぞれの結論を書くと下のようになります。

この記事では上記の2つのポイントも含め、借地権での立ち退きについて解説していきます。

地主側に「正当事由」がなければ、立ち退く必要はない

安心

地主が立ち退きを迫ってきたとしても、地主側に「正当事由」がなければ、立ち退く必要はありません。正当事由は文字通り「正しい理由」です。

この正当事由があるかどうかは、下の4項目で精査されます。

以下、4項目の内容の比較と、それぞれの詳細をまとめます。

正当事由を決める4項目の内容・一覧

4項目の内容を一覧にすると下記の通りです。

土地の使用を必要とする事情 そのまま。地主と借り主(今の利用者)の必要度を比較する
借地に関する従前の経緯 これまでの両者のやり取りがどうであったか。たとえば地代の滞納などがあったら地主が有利になる
土地の利用状況 借り主の利用状況を見て「この状態から追い出すのは酷である」と裁判所が判断したら追い出せない
財産上の給付 地主が借り主に支払う立ち退き料。上の3つのポイントから立ち退きが認められた場合、最後に仕上げとして払う

それぞれの重要度は下のようになっています。

土地の使用を必要とする事情 メイン
借地に関する従前の経緯 サブ
土地の利用状況 サブ
財産上の給付 最後の『補完』

借地の更新拒絶には『正当事由』が必要|正当事由の内容の概要(みずほ中央法律事務所)

重要度だけでなく、4項目の内容の解説も上記の記事を参考にしています(内容は引用より要約の方がわかりやすかったため、要約しています)。

以下、それぞれの内容を解説していきます。

(1)土地の使用を必要とする事情

これは「地主と借り主、どちらが切実に土地を必要としているか」というものです。上の重要度の比較で「メイン」となっているように、ここがもっとも重要視されます。

  • 借主…そこでなければ生活・営業できない
  • 地主…その土地でなくてもいい

このような状況では、立ち退き要求が認められることはありません。

(2)借地に関する従前の経緯

これは「その借地を巡って、これまでどんなやり取りをしてきたか」です。わかりやすい要素は「地代の滞納がなかったかどうか」です。

地代の滞納があった場合、借り主の誠実さが疑われます。また、地主がそのような借り主に出ていってほしいと思うことも「自然である」と判断される可能性が高くなるでしょう。

滞納といっても、数カ月程度なら問題はありません。問題がないというのは言い過ぎですが、少なくともそれで裁判所が「立ち退くべきである」とまでいうことはありません。

賃貸の家賃でも数カ月の滞納なら追い出されないことが多くあるものです。そして、借地の利用は賃貸住宅を借りるよりも遥かに重いものといえます(借り主が生活を変更しにくい状況)。

このため、数カ月程度の滞納で立ち退きが認められることはめったにありません。しかし、借り主にとってマイナス要素になり、地主にとってプラス要素になることは確かです。

(3)土地の利用状況

これは「土地の借り手が、その土地をどう使っているか」です。たとえばマイホームのように撤去が簡単にできない建物を建てて底に住んでいる―、という場合。これは借り主が残ることが認められやすくなります。そこを出ていくことが「明らかに大変」だからです。

「土地に店舗を建てている」なども同じです。借り主がそれで生計を立てていれば、やはり出て行くことは困難になります。

逆に「ただの資材置き場にしている」なら、それほど困らないでしょう。多少は困るでしょうが、マイホームや店舗を建てていることと比べれば、追い出されることのダメージは小さいといえます。

なお、この「土地の利用状況」という項目は、1つ目の「土地の使用を必要とする事情」ともある程度重なるものです。

(4)財産上の給付

これは「立ち退き料をいくら払うか」ということです。ここまで3つの項目をクリアしていて「地主側に正当事由がある」と認められたとしましょう。

そこで裁判所が「それで、地主さんは立ち退き料をいくら払いますか?」と聞いたとき「いえ、払いません」となったらご破算となるわけです。どれだけ正当事由があっても、借り主が土地を追い出されるダメージを補償しないなら、正当な行為とはいえません。

つまり、正当な「事由」があるだけでなく「行為」も必要なのです。正当な事由・行為がセットになって初めて、立ち退きが実現するということです。

地主…事由があれば立退いてもらえるが、立退料が必要

立退料
先の段落でも説明した通り、地主側に正当事由があれば立ち退きが実現します。ただし、その際に借り主に対して立ち退き料を払うことが必要です。

気になるのはこの立ち退き料の相場でしょう。これについて、ポイントをまとめると下のようになります。

  1. 立ち退き料に明確な相場はない
  2. 「立ち退くことによって借り主に発生する損害」を補償する
  3. 多数の要素を合わせて計算する

以下、それぞれのポイントについて説明します。

立ち退き料に明確な相場はない

借地の立ち退き料には、明確な相場がありません。専門家も下のように書いています。

賃貸人の場合でも、賃借人の場合でも、「立ち退き料の相場はいくらですか」という質問を受けますが、個々のケースごとに違います。土地の更地価格の何%などという相場はありません。
立ち退き料の相場・金額(内藤寿彦法律事務所)

相場がないならどう決めるのかというと、以下の通りです。

「立ち退くことによって借り主に発生する損害」を補償する

立ち退き料は、借地を立ち退くことによって借り主に発生する損害を補償するのが一般的です。交通事故などの損害賠償と同じで「実際に発生した(する)損害と同じ金額を払う」といえます。

その金額をどう算定するかは、下の通りです。

多数の要素を合わせて計算する

立ち退き料は、下のように多数の要素を総合して計算します。

●貸主・借主双方の事情
●借主の転居費用の補償
●借主の事実上失われる利益の補償
(中略)
●当該物件の価値
立退き料の算定方法(みお綜合法律事務所)

上の言葉をより簡単に書くと、下のようになります。

  • それぞれの事情
  • 引っ越し費用
  • 借り主に発生する損失(引越し費用はこの一種)
  • 土地の価値

「中略」とした部分には「借主の利用権の補償」という項目がありました。しかし、これは「事実上失われる利益」に含むこともできます。利用権を失うことは、借主の利益の損失であるためです。

専門家にとっては少々異なる部分ですが、一般的な感覚では「同じようなもの」なので、この部分はあえて「中略」としました。厳密な分類はおいておき、上記のように「多数の要素によって立ち退き料を計算する」ということは、理解していただけるでしょう。

まとめ

土地と家のイメージ

借地権の立ち退きについて、借主側と地主側それぞれの視点から解説してきました。最後にポイントをまとめると、下のようになります。

  • 地主側に正当事由があるときのみ、立ち退き要求が認められる
  • 正当事由は「どちらが切実に土地を必要としているか」が主な焦点
  • それ以外にも「それまでの経緯」などの諸条件で決まる
  • 立ち退きが成立したら、地主は立ち退き料を払う
  • 立ち退き料の相場はなく「実際に借り主に発生する損害」を補償する
  • たとえば、引越し費用や新居を借りる費用など

上記が借地権の立ち退きに関する主なポイントとなります。立ち退きを要求されて困っている借り主の方や、立ち退きを要求したい地主の方は、これらのポイントを意識して円満な交渉を心がけるようにしてください。