借地権の基礎知識

借地権での建て替えは地主の承諾が必要?リフォームは許可なしでできる!

借地権によって土地を利用している場合、建物の建て替えについて下のような疑問を持つことが多いでしょう。

  1. 建て替えは、地主の許可を取らなければいけないのか
  2. どのくらいの内容から、許可が必要なのか
  3. 災害が原因の建て替えでも、許可が必要なのか

これらについて結論を書くと、下のようになります。

  1. 許可が必要かどうかは内容による
  2. 内部のリフォームは不要、骨格に変更を加えるなら必要
  3. 災害なら不要だが、連絡はした方が無難

以下、上記のポイントも踏まえ「借地権での建て替え」について解説していきます。

借地権での建て替えに、地主の許可は必要か

図面を見て話し合う人たち

借地権での建て替えは、地主の許可が必要なケースもあれば、不要なケースもあります。ケース別に要不要をまとめると下の通りです。

  1. 内部のリフォームなら不要
  2. 屋根や柱など、骨格に変更を加えるリフォームなら必要
  3. 増築や敷地内の新築も必要

以下、それぞれのケースについて解説していきます。

内部のリフォームなら不要

内部のリフォームについては、規模の大きいものであってもほとんどのケースで許可が不要です。たとえばキッチンやお風呂のフルリフォームでも、地主の許可を得る必要はありません。

これは、建物の所有権は(土地の)借り主にあるためです。内部のリフォームは、どれだけ行っても「建物にしか」影響がありません。地主が持っている土地には影響がないのです。

そのため、一部の例外を除けば「内部のリフォームなら地主の許可は不要」となります。

屋根や柱など、骨格に変更を加えるリフォームなら必要

建物の面積や構造を変えず、内部だけで行う改築でも、屋根や柱などの骨格部分に変更を加えると、「改築」と見なされる可能性があります。

(大抵の借地契約は「増改築では地主の承諾が必要」となっているので、改築と見なされると承諾&承諾料が必要です)

具体的には、下のような変更を加えたケースで「改築」と認定されたことがありました。

  • 基礎コンクリート(全面的)
  • 土台・柱・間柱
  • 床・内壁(全面的)
  • 外壁(大部分)
  • 屋根(一部)

文面を見る限り、面積や間取りなどは変わっておらず「柱・屋根・壁・土台などを徹底的に変えた」という印象です。この工事の場合は「基礎コンクリートの打ち直し」もあるので、完全に内部だけでやったかはわかりません。

しかし、仮にこの打ち直しがなく、その他の「柱・壁・床・屋根」などの変更だけだったとしても、おそらくこれは改築と見なされたでしょう。

このようなグレーゾーンは専門家でも「判断が難しい」と口を揃えているものですが、とりあえず「骨格部分に変更を加えるなら、地主の承諾が必要」と考えてください。

増築や敷地内の新築も必要

建て替えでなく「建て増し」の場合も、地主の許可が必要になります。建て替えよりもこちらの方が、断然許可が必要になるものです。

理由は「土地の使い方が大きく変わる」ことにあります。そもそも、借地権での建て替えで地主の許可が必要になるのは「土地に影響を及ぼす可能性がある」ためです。

建て替えはここまで書いた通り「内部で大人しくやる」ものだったら、土地に影響することはありません。しかし、建て増しは新たに使う土地を増やすわけですから、当然土地に影響します。

このため、建て増し・敷地内の新築ともに、地主の許可が必要になるということです。

(敷地内の新築は、所有者が同じなら大抵「増築」と分類されます)

法律では「地主の承諾が必要」というルールはない

弁護士と家の模型

建て替えについての地主の承諾について「法律的に必要とされているのか」という点を疑問に思う人は多いでしょう。この点についてポイントをまとめると下のようになります。

  1. 契約書に「増改築禁止特約」がある場合のみ承諾が必要
  2. 増改築禁止特約は、判例でも有効とされている

それぞれ詳しく説明していきましょう。

契約書に「増改築禁止特約」がある場合のみ承諾が必要

多くの借地契約では、契約書に「増改築禁止特約」という内容が設けられています。この特約がある場合のみ、建て替えで地主の承諾が必要ということです。

特約とは「特別の条件をつけた約束」のことで、要は「民間人同士の契約」です。法的なルールではないものの「契約を守る」というルールは民法に規定されているので、増改築禁止特約も法的な効力を持ちます。

増改築禁止特約は、判例でも有効とされている

増改築禁止特約は、実際に過去の裁判でも有効とされています。判例のデータを箇条書きすると、下の通りです。

事件番号 昭和39(オ)1450
裁判年月日 昭和41年4月21日
法廷 最高裁判所・第一小法廷
掲載判例集 民集・第20巻4号720頁

この判例は、地主の承諾なしで建て替えをした借り主と、地主が争ったものです。結果的に借り主が価値「承諾なしの建て替えが認められた」という判例です。

これだと「増改築禁止特約は法的に無効とされている」と思うかもしれません。しかし、この判例では「そういう特約が存在することは認める」という結論になっています。

  • 特約の存在は認める
  • そして、今回の借り主が特約に違反していたことも認める
  • しかし、実際に土地に影響を及ぼすほど酷いものではなかった
  • だから、借地権の解除(借り主を追い出すこと)は認めない

上記のような判決だったのです。始めに「特約の存在を認める」という主旨の判決文が書かれていることで、「そういう特約を設定することは法的にOKである」ということがわかります。

(ただし、上のような判決になる以上「特約の地主側の力は、裁判になると弱い」ともいえます)

災害で建物が壊れた場合、地主の承諾は不要

災害で壊れた家

地震や土砂崩れなどで建物が壊れた場合には、当然再建が必要になるでしょう。この場合も地主の承諾が必要なのか、気になる人は多いかと思います。

結論を書くと、こうしたケースでは地主の許可なく再建してしまってかまいません。許可が不要なので承諾料も不要です。これについて、ポイントをまとめると下のようになります。

  1. 災害に限らず「信頼関係を壊すような行為ではない」ならOK
  2. 一応承諾を得る方がいい

以下、詳しく説明していきます。

災害に限らず「信頼関係を壊すような行為ではない」ならOK

災害による再建に限らず、借地権の建て替えでは「信頼関係を壊すような行為でない」と認定されれば、地主の承諾なしでOKとなります。先に紹介した「増改築禁止特約が有効とされた判例」を見ても、それがわかります。

この判例の裁判要旨では、下のように書かれています。

(前略)信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人は、前記特約に基づき、解除権を行使することは許されないものというべきである
最高裁判例「昭和39(オ)1450」

太字の部分を抜粋してまとめると、下のようになります。

  • 「信頼関係を破壊するほどでない」なら、
  • 「借地契約の解除」は認められない

借地契約の解除というのは、要するに「借り主を追い出す」ということです。借り主から申し込むなら別ですが、上の判例では「地主が借り主を訴えた」ので、借り主を追い出すこととイコールです。

最高裁の判決は、事実上の法律となる

上記の判例は最高裁のものですが、こうして最高裁で出た結論については「それが事実上の法律」とされます。実は、法律はあらゆるケースについてハッキリとルールを決めているわけではありません。

そのため、その「決められていない部分」「曖昧な部分」に関して、しばしば裁判で争われるわけです。それらの部分に対して最高裁が逐一判決を出し「司法のトップはこう考えている」という見解を示します。内容によっては、それが数年後などに法律として正式に制定されます。

(たとえば2006年の貸金業法改正も、まずは最高裁の判決から始まりました)

日本の司法はこのような仕組みなので、上記の「信頼関係を壊すほどでなければ、無断で建て替えをしてもいい」というのが、専門家の間でも共通する見解となっています。

法テラスの見解

実際にこの見解を専門家が共有しているのか、法テラスの記述を見てみましょう。法テラスとは「日本司法支援センター」の愛称で、国が設立した法的トラブル解決の案内所です。

簡単にいうと「国が設置した法律相談所」と思ってください。そのような公的機関である法テラスは、下のように書いています。

増改築禁止などの特約がある場合、仮に賃貸人の承諾なく再築したとしても、賃貸人との信頼関係を破壊したといえないような特別の事情があれば、賃貸人から解除することはできません。
地震で借地上の建物が全壊しました。賃貸人の承諾なく再築することは可能でしょうか。(法テラス)

上の内容も「信頼関係を壊すほどでなければ」「無断で再築していい」というものです。これは故人の弁護士の見解ではなく、法テラスとして書いている内容なので、「公的機関の見解」といえます(つまり正しいということです)。

一応承諾を得る方がいい

ここまで書いた通り、災害で自宅が壊れたなどの事情があれば、地主に無断で建て替え(建て直し)をしてしまってもかまいません。ただし、一応地主に連絡しておく方が無難です。

友達との人間関係を考えればわかるでしょうが、「法的に問題がなくても、一言連絡してほしかった」ということは、山のようにあるかと思います。そもそも、日常生活では「法的に問題があるかないか」はあまり考えないでしょう。「こういうときは連絡するのが普通」という「一般常識」で動くことが多いはずです。

常識は人それぞれなので、相手に強制すべきものではありません。そのため、借り主が災害後の建て替えで連絡をしなくても、地主が法的に何かをすることはできないでしょう。

しかし、借り主にとって地主は「特に良好な関係を保つべき相手」です。借地権を売り出すときや地主に買い取ってもらうときなど、「地主の協力があると大きく有利になる」「なければ非常に不利になる」というケースは多くあります。

つまり「地主を敵に回したら自分が損する」ということです。それを考えると、やはり連絡だけは入れておくべきでしょう。

そして、万が一地主が承諾料などを要求してきたら、ここまで説明した法的な根拠をもとに拒否すればOKです。

(地主を味方につけることのメリット、敵に回すことのデメリットは下の記事を参考にしてください)

借地の建て替えで承諾料が必要な場合、いくらが相場?

建て替え工事中の建物
建替承諾料の相場は「更地価格の2~5%程度」とされます。これは、株式会社サンセイランディックなどが説明している内容です。

更地価格とは「土地の価格」のことです。土地の価格は「物件情報に書かれている価格」を指します(国が決める評価額などではない、ということです)。

更地価格の金額別・建替承諾料の早見表

上記の「更地価格の2~5%」という相場で早見表を作ると、下のようになります。右側の「建替承諾料」の金額で、安い方は2%、高い方は5%となっています。

更地価格 建替承諾料の相場
500万円 10~25万円
1000万円 20~50万円
2000万円 40~100万円
3000万円 60~150万円
5000万円 100~250万円
1億円 200~500万円

上記にない金額の場合、前後の金額帯から大体の目星をつけていただけたらと思います。

「東京は3%を原則として増減」という専門家の指摘

東京に限定すると、借地の建て替えでの承諾料は「3%が原則で、個別の事情によって増減する」とされます。これは「みずほ中央法律事務所」で説明されています。

「個別の事情」の度合いによってはかなり増減することも考えられます。そう考えると、東京でも「2~5%」という全国の相場から、それほど大きくは外れないでしょう。

(もちろん、東京のパーセンテージも「更地価格に対する割合」です。「更地価格の3%が基本」ということです)

「非堅固建物」を「堅固建物」にする場合、承諾料が高くなることも

ここまで書いてきた承諾料の相場は、あくまで「単純な建て替え」です。「より高度な建て替え」になると、承諾料が高くなることもあります。

高度な建て替えとは「非堅固建物を、堅固建物にする」という内容です。非堅固建物と堅固建物の違いは下記の通りです。

非堅固建物 木造住宅や、それ以下の堅固さの建物
堅固建物 コンクリート造や煉瓦造などの建物

「非堅固を堅固にする」と承諾料が高くなる理由は「借地条件が変わる」ためです。

「借地条件が変わる」とは?

これは「利用期間が変わる」ということです。借地権は、基本的に期限がありません。「定期借地権」ならありますが、「旧借地権」や「普通借地権」だとないのです。

では、いつ借地契約が終わるかというと「建物が朽廃して使えなくなった」ときです。そして、非堅固建物で契約した場合、地主は「30年くらいで使えなくなるだろう」という想定をしていたといえます。

それが堅固建物に変わって期間が延びてしまうと、それはもはや「当初と違う契約」になってしまうわけです。このため「非堅固を堅固にする」場合は、承諾料が高くなることが多いのです。

(法律で決まっているわけではないので、高くならない場合もあります。これは地主さんの方針や状況次第です)

承諾料が上がるとしたら、どれくらいか

これは一般的に「通常の承諾料の1.5%+条件変更手数料」とされます。両方を合計すると、大体「更地価格の7~10%」と考えてください。

承諾料が値上がりする場合の早見表

値上がりする場合の相場を、更地価格ごとに早見表にすると下記の通りです。

更地価格 承諾料の相場
500万円 35~50万円
1000万円 70~100万円
2000万円 140~200万円
3000万円 210~300万円
5000万円 350~500万円
1億円 700~1000万円

値上がりしない場合と比べると、かなり高く感じられるかもしれません。もしこれを高いと感じる場合は「堅固建物に建て替える必要があるか」ということも考えてみるべきでしょう。

まとめ

屋根で工事をしている男性

以上、借地権を行使している場合の建て替えについて、まとめてきました。最後に要点を箇条書きすると下の通りです。

借地権での建て替え・まとめ
  • 台所や浴室など、内部のフルリフォーム程度なら地主の許可は不要
  • 屋根・柱などの骨格に変化を加えるなら、許可が必要
  • 増築や敷地内の新築も許可が必要
  • 災害時の建て替えは許可不要
  • 許可が必要なケースで無断で建て替えをしても、問題なかった判例がある
  • 法的に問題がない場合でも、地主との良好な関係を保つために連絡はすべき
  • 地主との良い関係は、特に借地権を売却するときに役立つ

建て替えに限らず借地権についての地主との関係は難しい点が多いものです。しかし、人間的なコミュニケーションを大事にしている地主・借り主ほど、トラブルが少ない傾向があります。

できるだけ不要なトラブルを避け、いつか借地権を売却するときに有利な状況をつくるためにも、建て替えは慎重に進めるようにしましょう。